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特集ワイド

健康守る責任、入管に 収容外国人、適切治療ほど遠く 死なれては困る? 病状悪化で仮放免

入管収容中に男性が餓死した事件をめぐり法務省前で抗議のプラカードを掲げる市民たち=東京都千代田区で2019年10月8日、井田純撮影

 滞在許可を失って国外退去処分となった外国人を収容する出入国在留管理庁(入管庁)の施設で、健康状態を悪化させるケースが増えている。収容者の中には、適切な治療が受けられず、重篤な状態になって施設を出される外国人も多い。【井田純】

 ペルー出身の男性(54)が、腹部の痛みを訴えて宇都宮市の総合病院を訪れたのは昨年12月25日のことだった。胆管結石から膵炎(すいえん)を併発していると診断された。即日、内視鏡手術を受け、そのまま入院。同病院の担当者は「もし手当てが遅れていたら、命に関わるような状態だった」と話した。

 この男性は、前日まで東京出入国在留管理局(東京都港区)に収容されていた、いわゆる非正規滞在者だ。1992年に来日、在留資格を失って2018年2月から収容生活を送っていた。昨年から次第に体調を崩し、真っ黒い尿が出るようになった。80キロあった体重も50キロ台に落ち、発熱や嘔吐(おうと)を繰り返していたが、収容施設内では医師の診察の機会を得ること自体が容易ではなかったという。

 「(診療を希望する)アプリケーションに症状を書いて担当職員に出すと、大体3週間ぐらい待たされます。頭痛がひどいからと申し込み、長く待たされた揚げ句にやっと診察日を迎えたとき、例えば頭痛に加えて腹も痛くなっていたとしても、『その症状が書いていない』と診てくれない。改めて診察を申し込むようにと言われるのです」。1月上旬、入院先の病院で取材に応じたこの男性は、収容生活を振り返ってこう言う。「死ぬかもしれないと思ったことが何度もあります」

 男性が不安に思うのも無理はない。入管庁の収容施設では昨年6月、大村入国管理センター(長崎県)でナイジェリア人男性が餓死。14年3月にも、東日本入国管理センター(茨城県)でカメルーン人男性が病死している。

 男性の病状が悪化する中、昨年暮れになって、在留資格のないまま一時的に収容を解かれる仮放免措置が認められた。非正規滞在の外国人への医療支援活動を続けているNPO「北関東医療相談会(アミーゴス)」の長澤正隆事務局長は「症状がひどくなると外に出す、ということは、収容施設内で死なれては困るからと仮放免したと考えざるを得ない。彼はたまたま治療を受けられたが、病院にも行けず、一人で苦しんでいる外国人もいるはずです」と憤る。

 アミーゴスは、経済的に苦しい外国人らを対象にした医療相談会を90年代から関東各地で開催してきた。今回のケースも、以前にこの相談会に参加したことがあった男性がアミーゴスに連絡、病院への紹介につながった。

 医療支援を受けたこの男性はむしろ、例外的な存在なのかもしれない。入管収容中に健康を害し、適切な医療を受けられずに苦しむ外国人が急激に増えている。長澤さんが語る。「昨年、2週間の期限で仮放免されたトルコ国籍の男性は、B型肝炎に感染していた。この期限では医療上十分な対応ができないという内容の医師の診断書を出しましたが、それでも彼は2週間後に再収容されてしまった。入管は、外国人の基本的人権をなんとも思っていないから、医師の…

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