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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 昔の新聞を見ていると時にびっくりする記事がある。「箝口令(かんこうれい)全国に布(し)かれん」――内務省の通達を伝える1920(大正9)年の大阪毎日新聞の記事もそれで、いったい国民に何を口止めしようというのか▲記事を読むと何のことはない、流行性感冒の予防のため「口蔽器(マスク)」の着用を励行せよというのだ。整理記者がいたずら心でつけた見出しなのか。ただこの通達、マスクをつけぬ者には電車への乗車を拒めるという強圧的なものだった▲当時は全世界で死者5000万人以上を出したスペイン風邪の流行後期である。今でも来日した欧米人を気味悪がらせる日本人のマスク着用の習慣は、こんなスペイン風邪流行時の政府の「箝口令」をきっかけに定着したようである▲インフルエンザの流行と、暖冬で花粉の飛散も早い見通しから街はマスク姿が目立っていた。加えて中国の新型肺炎発生ときょうからの春節連休による観光客の来日ラッシュである。列島はマスクをかけた内外の人々で埋まりそうだ▲今日の専門家によれば、実は一般のマスクはつけてもウイルス感染の予防効果を期待できないという。だがせき、くしゃみのある人には周囲への飛沫(ひまつ)感染を防ぐのに必要で、ぜひ着用していただきたい。予防は手洗いが効果的という▲着用するならまめに新品と交換せねばならず、マスクの品薄が気になるこの先だ。覆面禁止令の出た香港のデモでは自由の象徴とされ、今また人類の感染症との闘いのシンボルとなったマスクの時代である。

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