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「患者が近くに?」戸惑い広がる奈良 感染症の専門家は「冷静に行動を」

マスクを着用して鹿と戯れる外国人観光客ら=奈良市雑司町の東大寺で2020年1月29日午前9時23分、小宅洋介撮影

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 中国湖北省武漢市からのツアー客を乗せた奈良県在住の60代の男性バス運転手が新型コロナウイルスに感染した問題では、厚生労働省や県が運転手の受診病院やツアーバスの詳しいルートなどについて、個人情報や風評被害の懸念を理由に明らかにしていない。県内では「患者が近所にいるのでは」と戸惑いと疑心暗鬼が広がる。一方、大阪府は感染者が確認された場合、滞在した市町村名や日程を独自で公表することを決定。情報開示を巡り、自治体に差が生じている。

情報公開巡り、自治体は板挟み

新型肺炎と判明したバス運転手の感染経過

 奈良県内のある市役所には28日以降、「患者が市内にいるのでは」との問い合わせが市民から多く寄せられた。市が国や県に照会しても詳しい情報は教えてもらえず、担当者は「市民からは対応が遅いと言われ、国や県からも情報が入ってこない。混乱を防ぐためにも情報公開を」と話す。

 県幹部は28日夜の記者会見で、運転手の入院先や立ち寄り先の詳しい情報を明らかにしなかった。濃厚接触者のフォローも、県の保健所が担当するため原則として県内各市町村との情報共有は必要ないとしていた。翌29日には荒井正吾知事が、バスが奈良公園(奈良市)を訪れていたことなど立ち寄り先の一部を公表した。ただ、県疾病対策課は「個人の特定につながる情報は出さないという従来の方針を今回も確認している」と説明する。

 感染症が専門の岩田健太郎・神戸大教授は「個人情報の保護からも、詳細な情報は公開すべきではない。みだりに公開することで、不安をあおり、話をややこしくする」と指摘。「奈良県内で感染者が見つかったからといって、(一般市民が)対応を変える必要はない。冷静に行動を」と呼び掛ける。

 一方、大阪府の吉村洋文知事は29日、国の対応について「国は新型コロナウイルスを過小評価しているのでは。適切な情報が開示されないと国民が不安になる」と説明。観光地を抱える大阪市の松井一郎市長も「(感染者の)ある程度のルートを公表してもらわないと対応できない。国の捉え方は緩い」と苦言を呈した。一方で「我々も風評被害を起こさないように発表していく」と述べ、冷静な対応を訴えた。【新宮達、矢追健介、広瀬晃子、塩路佳子】

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