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論の周辺

坪内祐三さんの「新しい言葉」

 学芸記者になったばかりの頃、先輩から「切り札の執筆者」を作るように言われた。正確な表現は覚えていないが、万が一、紙面に穴があきそうな事態が生じた時、すぐに寄稿を依頼できる書き手を探しておけ、といったニュアンスである。先輩としては「人脈作りをしろ」とハッパをかけていたのかもしれない。

 私にとっての「切り札」の一人が坪内祐三さんだった。13日に急逝、との予期せぬ報に驚いた。61歳。年末に東京都内であった野間文芸賞贈呈式の会場で声をかけてくれ、元気な姿を目にしたばかりだった。通夜に参列してきた今も信じられない思いだ。

 坪内さんに相談したり、実際にコラムなどを連載してもらったりした企画は数多く、受けた恩恵を記せばきりがない。近現代の文学から歴史、思想、社会風俗まで、とにかく関心の幅と知識が広く、オールマイティーな人だった。私が知るのは一端にすぎないが、書き留めておきたい。

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