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つながり紡いで

災害時の外国人支援 孤立させず、安全へ備え=山野上隆史 /大阪

地域の防災訓練に出展したとよなか国際交流協会のブース。参加した外国人に多言語での資料を提供したほか、災害時の外国人への対応など協会の取り組みを紹介した

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 「外国人が避難所に行っていいか分からなかった」「テレビで何を言っているか分からない」――。2018年の大阪北部地震や西日本豪雨の時に寄せられた外国人の声だ。地域で暮らす外国人は年々増加するが、地震や台風を経験したことがない人も少なくない。

 18年6月18日の大阪北部地震(マグニチュード6・1)で豊中市は震度5強を観測した。とよなか国際交流協会では災害時多言語情報支援センターを設置し、協会のホームページやフェイスブックを通じて地震後に注意が必要なこと(余震など)、ブルーシートの配布や罹災(りさい)証明書の発行などについて、中国語や英語、やさしい日本語などで情報を発信した。避難所も回って多言語で情報提供し、相談対応についても伝えた。落ち着いてからは防災セミナーを行い、外国人の不安解消に努めた。

 地震から3日後、日本語教室の再開に合わせ、地震に関するアンケートを行った。そこからは「何をしたらいいか分からなかった」という戸惑いや「眠れない」「余震が怖くて火が使えず、料理ができない」など想像以上の不安が明らかになった。

 また、協会が発信した多言語情報も十分に届いていなかった。「地震の時にどうしたらいいですか」「コンビニに聞きに行ったけど、店員が忙しそうで聞けなかった」「川が近いので津波が来ないか不安だった」。また、「どうしたらいいか周りの日本人に聞いたが、言葉が分からなかった」という言葉の壁もうかがえた。

 外国人同士で情報交換していた人も多かった。友人を頼って一部の避難所に外国人が集まったり、「建物が丈夫で椅子も多いからパチンコ屋に逃げるといい」という誤った情報が流れたりした。地域とのつながりが弱く、情報も偏る中で、右往左往する様子が浮き彫りになった。

 地震後、協会では自治会などの地域自治組織が行う避難訓練への参加を始めている。

 地域住民に多言語に翻訳した避難所のルール、掲示シートを見せると「言葉分からなかったら、そりゃ困るよね。近所にも住んでるし」。改めて外国人の存在が意識される。バケツリレーなどで技能実習生ら若い外国人が活躍すると「家どこ?」「仕事は何?」「いざというときに頼りになるな」といった声も出る。実際に顔を合わせ、接点ができることで関心が生まれ、地域と協会の関係も少しずつ生まれていく。

 災害は全ての人に等しく降りかかるが、知識や経験、情報や利用できる資源などによって、不安や恐怖の程度、受ける影響は大きく異なる。外国人や外国人コミュニティーが孤立せず、地域の人に気軽に話を聞けるか、多言語や外国人でも分かるやさしい日本語で対応できるか、さらに解消できない不安や課題をつなぐ先があるか。多様な人や機関が出会い、つながる中で支え合う重層的なネットワーク。それが安心・安全な多文化共生のまちづくりには欠かせない。


 地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は2月28日掲載予定。


 ■人物略歴

山野上隆史(やまのうえ・たかし)さん

 公益財団法人とよなか国際交流協会理事兼事務局長。1977年、大阪生まれ、神戸育ち。高校生の時、阪神大震災を経験。主な共著に「外国人と共生する地域づくり 大阪・豊中の実践から見えてきたもの」(明石書店)。

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