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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「われわれは欧州合衆国とでもいうべきものを…

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 「われわれは欧州合衆国とでもいうべきものを成立させねばならない。その最初の一歩、欧州評議会創設の緊急事業を成功させるためにフランスとドイツは協働しなければならない」。はて、誰の発言か▲実はこれ、根っからの保守主義者でナショナリストだった英国のチャーチルの言葉である。1946年、チューリヒでの演説で、2度の大戦で荒廃し米ソに分断された欧州の文明の再興を、政治家なら誰もが真剣に考えた時代だった▲時は流れ、欧州28カ国が加盟した今日の欧州連合(EU)からいよいよ英国がきょう(日本時間あす朝)離脱する。戦後ほどなく仏独の提携から始まり、東西冷戦の終結で欧州全域に広がった欧州統合の流れに生じた初の逆流である▲4年前の国民投票で離脱を決めた英国だが、EUとの合意なき離脱も心配させたこの間のすったもんだである。総選挙に出たジョンソン政権の与党勝利でようやく離脱実現となったものの、離脱派と残留派で割れた世論の分断は続く▲今後はEUとの経済関係が維持される年末までの移行期間に入るが、その間に新たな自由貿易協定の合意ができねばまた大混乱の危機が訪れる。離脱派が夢見る「栄光ある孤立」を新たな成長の軌道に乗せるのは依然容易でなかろう▲グローバリズムへの草の根の反発により欧州統合の理想が足元から揺さぶられるEUも、離脱した英国の今後が気になろう。英国も含む欧州文明が、その内側を走る深い分断線と向き合わねばならぬ現代である。

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