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社説

英国のEU離脱 欧州との絆を断たぬよう

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 英国が欧州連合(EU)を離脱する。EUから加盟国が脱退した先例はない。一貫して拡大を続けてきたEUが初めて「縮小」し、欧州は歴史的な岐路を迎える。

 英国は、人、資本、物、サービスが自由に移動できるEUの「単一市場」と、域内の関税がゼロの「関税同盟」に別れを告げることになる。

 二度と戦争を起こさない――。欧州統合の歩みは第二次大戦後、フランスとドイツの和解を土台とする「非戦の誓い」から産声を上げた。

 発足当初6カ国だった加盟国は28カ国に拡大した。人口5億人のEUは「軍事征服によらずに建設された帝国」(バローゾ元欧州委員長)とさえ形容される存在になった。

 英国が欧州統合の歩みに参加して47年、「離脱」を選んだ国民投票から3年7カ月。「欧州帝国」から立ち去る英国はどこに向かうのか。

自国優先が招く危うさ

 「平和、繁栄、そして全ての国々との友好」。EU離脱記念の英国硬貨にはそう刻まれている。だが、そこに「欧州」の文字はない。

 統合欧州の一員なのか否か。ドーバー海峡でフランスなどと隔てられた英国は自問を続けてきた。

 1973年にEUの前身に加盟したが、ユーロは導入しなかった。一方、同じアングロサクソンの米国と「特別な関係」を保つ。離脱で英国の軸足は米国側に傾く。

 EUは英国の輸出入の約半分を占め、英国立経済社会研究所は離脱による損失を年間700億ポンド(約10兆円)と見込む。離脱の代価は重い。

 両者の距離を左右するのが年末までの「移行期間」だ。関税同盟に代わる自由貿易協定(FTA)をEUと結べなければ、「合意なき離脱」同様の混乱が待ち受ける。

 懸念されるのは、今春の本格交渉入り前から、英国とEUが角を突き合わせていることだ。

 ジョンソン英首相は、離脱によって「英国に再び力を与え、最も偉大にする」と鼻息が荒い。EU規制の縛りから外れて、欧州市場で英国の競争力を発揮したい考えだ。

 これに対してEUは、英国に有利となる「いいとこ取り」を許さない構えだ。環境や食品安全などで同一基準を守るよう迫っている。

 歩み寄れずに無秩序な離脱となれば、欧州だけでなく、世界経済にも影響が及ぶ。双方とも、積み上げた歴史的なつながりを断たないよう全力を尽くすべきだ。

 離脱問題の背景には、エリート支配に反発し、移民排斥を叫ぶポピュリズム(大衆迎合主義)の高まりと、「自国第一主義」の台頭がある。温床は、人々の不満だ。英国民投票ではそれがEUに向けられた。

 選挙の洗礼を経ないEU官僚は長年、「非民主的」と批判を浴びてきた。急ぎ足で統合の度合いを深めるEUの姿勢が「国家主権が脅かされる」との懐疑心を生んだ。

中堅国家の連携強化を

 近年、EUの結束に遠心力が働いた事情もある。ギリシャ財政危機を端緒とするユーロ危機、中東・アフリカを震源地とする難民危機への対応で加盟国間に亀裂が生まれた。

 「ブレグジット(英国のEU離脱)はEUへの警鐘だ」。メルケル独首相は英経済紙フィナンシャル・タイムズにそう語った。「英国なきEU」は外交力、存在感も低下する。

 欧州統合の父、ジャン・モネは「欧州は危機の中で形成され、解決策の積み重ねとして構築されていく」と述べた。EUは立ち止まり、統合のあり方を省みるべきだろう。

 「米国第一」のトランプ米大統領が国際ルールに背を向ける身勝手な振る舞いを続け、世界秩序が揺らいでいる。その一方で、強権的な中国やロシアが影響力を増している。

 地球温暖化や感染症の拡大、テロの脅威など、国境を超える問題は国単位では解決できない。いまほど、国際協調が必要とされる時はない。

 重要なのは、自由と民主主義の価値観を共有する日欧など「ミドルパワー(中堅国家)」の役割だ。大国による覇権争いの乱世にこそ秩序と安定の維持に力を合わせるべきだ。

 日本はEUと英国の双方と良好な関係を持つ。1年前に発効した日EU経済連携協定(EPA)で食品などの貿易が拡大している。英国は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加に意欲を示す。

 日本は両者と連携を強化し、中堅国家のネットワークの構築に貢献すべきだろう。それはEUと英国のかすがいにもなるはずだ。

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