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中満泉さんから「地球を変えるあなたへ」

(11)広がる格差 早急な取り組みが必要

ナイジェリア政府非公認の難民キャンプで暮らす国内避難民の子どもたち。国内避難民の男性は「子どもの笑顔がここにいるみんなの希望です」と話しています=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリ市で2019年9月

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早急さっきゅうみが必要ひつよう

 今日きょうは、格差かくさ不平等ふびょうどうはなしをしましょう。

 スイスのダボスでまいとしがつ世界せかい経済けいざいリーダーがあつまる会議かいぎ世界経済せかいけいざいフォーラム」があります。その直前ちょくぜん国際こくさいNGO(非政府組織ひせいふそしき)「オックスファム」が、格差かくさについて報告書ほうこくしょしました。それによると、世界せかいのトップ1%の大金持おおがねもちが資産しさん貯金ちょきんかぶ土地とちいえなど)は、世界せかい人口じんこうやく77億人おくにんちゅう69億人おくにん資産しさんの、なんと2ばいであることがかりました。

高等教育こうとうきょういく拡大かくだい

 国連こくれん報告書ほうこくしょによると、世界せかいでは10人中にんちゅうにん格差かくさひろがりつつあるくにらしています。どもの保健ほけん基礎きそ教育きょういくでは不平等ふびょうどうちいさくなっていますが、高等教育こうとうきょういくではおおきくなっています。給料きゅうりょうなどの所得しょとく格差かくさ史上最大しじょうさいだいです。地域ちいきてきには、アフリカとラテンアメリカでもっとおおきいですが、1990ねんだいくらべるとちいさくなりつつあります。一方いっぽう日本にっぽんなど先進せんしんこくと、人口じんこうおお中国ちゅうごくとインドでは所得格差しょとくかくさひろがりつつあります。

 さくねんまつされた国連こくれん開発かいはつ計画けいかく(UNDP)の報告書ほうこくしょは、格差かくさ不平等ふびょうどう分析ぶんせきしています。まずしいいえまれたとお金持かねもちのいえ環境かんきょう最初さいしょからことなるように、格差かくさはしばしばひとまれるまえからはじまり、生涯しょうがいとおして蓄積ちくせきしていきます。女性差別じょせいさべつ格差かくさおおきな要因よういんです。いい保健ほけん医療いりょうサービスがられるかどうかの格差かくさは、健康けんこう寿命じゅみょう格差かくさつくります。高等教育こうとうきょういくけられるかどうかのは、あたらしい技術ぎじゅつ習得しゅうとくできるひととそうでないひとみ、それが所得しょとく格差かくさにつながります。格差かくさ世代せだいえてがれるだけでなく、21世紀せいきにはよりひろがる可能性かのうせいたかいのです。

 オックスファムの報告書ほうこくしょは、この傾向けいこうはじまっているとしめしているようです。グローバル人工知能じんこうちのう(AI)やサイバー技術ぎじゅつなどが、21世紀せいきにはあたらしいビジネスをんでいくからです。おおくのくにはやいスピードで、もっとゆたかなそう所得しょとく資産しさん蓄積ちくせきすすんでいることがうかがえます。日本にっぽんでは自己責任じこせきにん個人こじん努力どりょく強調きょうちょうされることがおおいですが、格差かくさはすでに個人こじん努力どりょくでは解決かいけつできない状況じょうきょうにあると、国際社会こくさいしゃかいではかんがえられています。

世界せかい安定あんているがす

 1がつ22にち国連こくれんのグテレス事務総長じむそうちょうは、人類じんるい進歩しんぽあやうくするよっつの脅威きょういについて説明せつめいしました。それは(1)核兵器かくへいきふく平和へいわ安全あんぜんへの脅威きょうい(2)気候きこう危機きき(3)世界中せかいじゅうこっている人々ひとびと政治不信せいじふしん(4)しん技術ぎじゅつ悪用あくよう、です。そして政治不信せいじふしん背景はいけい格差拡大かくさかくだいがあると指摘してきしました。世界中せかいじゅう国々くにぐにおおきなデモがおこなわれ、その共通点きょうつうてん格差かくさたいするいかりといらちです。格差かくさ問題もんだいはすでにわたしたちの世界せかい安定あんていおおきな影響えいきょうおよぼしはじめているのです。そして深刻しんこく格差かくさが、社会しゃかい破壊はかいすることは歴史的れきしてきあきらかです。

 さて、どうすればいいのでしょうか。どの分析ぶんせきも「格差かくさ不平等ふびょうどうらせる」としています。ただし、いくつか重要じゅうようなポイントがあります。まず早急さっきゅうむこと。経済格差けいざいかくさが、政治的権力せいじてきけんりょく格差かくさになってしまうと、金持かねもちが自分じぶんたちに有利ゆうり政策せいさくばかりをつくることになり、必要ひつよう政策せいさくめられなくなってしまうからです。オックスファムは、各国かっこく政府せいふ国民こくみんの1%ではなく99%の利益りえきになる政策せいさくをとびかけています。たとえば世界的せかいてきれば、もっとゆたかな1%のひとたちの資産しさんに、10ねんかん税金ぜいきんを0・5%追加ついかでかけるだけで、教育きょういく医療いりょう高齢者こうれいしゃ介護かいごなどで1おく1700まんにん雇用こようすことができるおかねられるそうです。

 もうひとつのポイントは、根深ねぶか社会規範しゃかいきはん(こうあるべきだというかんがかた)を見直みなおして、格差かくさにつながる根本こんぽんてき要因よういんのぞくことです。つまり、おかねながれだけでなく差別さべつ平等びょうどうや、政治権力せいじけんりょくのかたよりもかんがえなければいけません。

 ダボス会議かいぎでは、格差かくさ解消かいしょうのために、これまでは株主かぶぬし利益りえきをもたらすのが第一だいいちだった資本主義しほんしゅぎ見直みなおそうというはなしています。はたらひと環境かんきょう社会しゃかい全体ぜんたい利益りえきをもたらすあたらしい資本主義しほんしゅぎにしよう、との議論ぎろんはじまっているのです。


中満なかみついずみさん[国連こくれん事務次長じむじちょう

 1963ねんまれ。アメリカの大学院だいがくいんて89ねん国連こくれんり。難民なんみん保護ほご国連平和維持活動こくれんへいわいじかつどう核兵器禁止条約かくへいききんしじょうやく採択さいたくなどのためにはたらいてきた。著書ちょしょ児童書じどうしょ危機きき現場げんばつ」など。

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