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社説

戦争遺跡の保存 惨禍伝える方策探りたい

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 戦争がもたらした惨禍の記憶をどう後世に引き継いでいくか。軍事施設の遺構など「戦争遺跡」の老朽化が進む中、保存を巡る議論が起こっている。

 広島市に4棟残る被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」について、広島県が所有の3棟のうち2棟を解体、1棟を外観のみ保存する方針を示した。

 震度6以上の地震で倒壊する恐れがあるというのが理由だ。1棟を所有する国は、県の検討を見守る方針という。

 被服支廠は軍服や軍靴を製造・修理する軍需工場で、爆心地から2・7キロ南東に位置する。

 かつての軍都・広島を象徴する巨大な建物には、爆風でゆがんだ鉄製の窓枠や扉がそのまま残る。

 原爆投下直後には、臨時救護所として使われた。多くの人が苦しみながら亡くなっていく様子を詩人の峠三吉が「倉庫の記録」につづった。

 被爆者団体などが全棟保存を求めている。県が実施したパブリックコメントでも、6割が県の方針に反対だった。

 県は当初予定していた来年度の解体着手を見送る方向というが、「解体方針に変わりはない」とする。

 老朽化や開発などで、戦争遺跡は各地で保存を巡って揺れている。

 最近では、川崎市の明治大キャンパス内にある旧陸軍登戸研究所の遺構の一部の撤去が議論されている。風船爆弾など秘密兵器開発の拠点となった所だ。

 戦争遺跡の歴史的価値をどう定義するかは難しい。しかし、終戦から75年たち、被爆者や戦争体験者という生き証人が少なくなっている。被爆や戦争の実相を伝える「物言わぬ証人」の存在意義は小さくない。

 広島の原爆ドームが、存廃論議の末、21年後の1966年に保存が決まったという経緯もある。

 一度壊したら二度と元には戻らない。国や自治体が文化財として保護の対象にしているのは300件近くあるが、未指定のものについても、地域の歴史の中できちんと評価していくことが今後は必要だ。

 活用策の検討も含め、「解体ありき」ではない議論を進めるべきだ。 行政だけではなく、民間の知恵も借りながら、悔いの残らない解決方法を見つけたい。

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