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「麻生発言」で考えた…なぜ「日本は単一民族の国」と思いたがるのか?

小熊英二慶応大教授=東京都内で2020年1月17日、梅村直承撮影

 考えている。麻生太郎財務相の「2000年にわたり、一つの国で、一つの民族、一つの王朝が続く国は日本だけ」というあの発言である。語られざる論点が気になっていた。なぜ、彼らは「日本は単一民族の国」と考えたがるのか? 「麻生発言」の周囲を思索した。【吉井理記/統合デジタル取材センター】

 その発言が飛び出したのは、1月13日、麻生氏の選挙区・福岡県直方市でのことである。2019年のラグビー・ワールドカップでの日本の活躍に触れ、「インターナショナルな中、日本は堂々と存在感を発揮した」としたうえで、こう続けた。

 「だから2000年の長きにわたって、一つの国で、一つの場所で、一つの言葉で、一つの民族、一つの天皇という王朝が続いているのはここしかない。いい国なんだなと。これに勝る証明があったら教えてほしい」

 「一つの……」という言葉や考えがお好きなのは伝わるが、これが「いい国」の「証明」になる、という論理はよく分からない。ついでに言えば「一つの……」を麻生氏が連呼するテレビニュースを見て記者が思い浮かべたのは、ナチスが1934年のニュルンベルク党大会で掲げたあの有名な標語「一つの民族、一人の総統、一つの帝国!」であった。

 さて、麻生氏の発言が報じられると、相次いで各方面から批判が上がったのは読者もご存じの通りである。

 自民党でも、石破茂元幹事長が「アイヌの方々は先住民であることは法律(昨年4月成立のアイヌ民族支援法)でも明らかにした。わが国の方針とは異なる」(1月15日、記者団に)と言明したし、ジャーナリストの青木理さんは「(琉球王国だった)沖縄もそうだし、在日コリアンもたくさんいるし、上皇后陛下がかつて韓国(百済王室と日本の天皇家との)とのゆかりを言っている」(1月19日放送のTBS系「サンデーモーニング」で)と指摘した。

 そもそも、2000年の間に中国大陸や朝鮮半島などから多くの人(異民族)が日本列島に渡来・定着し続けてきたことは今さら記すまでもないのだが、こうした批判に対し、SNS上では「麻生発言の何が問題なのか」という声が少なくないのだ。

 「日本はずーっと単一民族」「どこが不適切なんだ? 日本は一つの民族だろが」「日本人は一つの民族っていう仲間意識の表れなんじゃない? それを否定する人って日本人じゃないよね? 日本嫌いなの?」などなど……。

 麻生氏は総務相だった2005年にも同様の発言をしたし、中曽根康弘元首相も「日本は単一民族だから教育水準が高い」という趣旨の発言(1986年)で物議を醸したことは有名だ。なぜこうした言葉が、自国の「優位性」という文脈で繰り返されるのか?

 「結論から言えば『日本は一つの民族』『日本は単一民族』という物言い、あるいは『自分たちは単一で…

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