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“一番売れてる映画雑誌”休刊の内幕(上) 「映画秘宝」元編集長が語る「絶頂期に引退」のワケ

「映画秘宝」最後の編集長となった岩田和明さん

 独自路線で人気の映画月刊誌「映画秘宝」が、1月21日発売の3月号で休刊した。発行元の洋泉社が親会社の宝島社に吸収合併されることになり、宝島社が雑誌発行を継承しないことを決めたのだ。発行部数は公称5万部。出版不況が構造化し、映画誌も軒並み苦戦して消えてゆく中でむしろ部数は伸び、自称“一番売れている映画雑誌”だった。折しも創刊から25年の節目。「絶頂期に優勝旗を持って引退するみたい」な休刊の背景を、5代目にして最後の編集長となった、岩田和明さん(40)に聞いた。【勝田友巳】

 ――休刊は12月21日発売の2月号の編集後記などで告知され、多くの惜しむ声が広がっています。

 ◆まずは、おかげさまで休刊号が完売店続出中で、たいへんご迷惑をおかけしております。ネット通販のアマゾンでは、発売日の2週間前に在庫がなくなり、他のネット書店でも発売前に品切れになってしまいました。発行部数は休刊が決まる前にすでにフィックスしていたうえに、版元の洋泉社が1月31日でなくなってしまうため、僕としても手の施しようがなく……どうすることもできないんですよ。

 ――心中お察しします。岩田さんは、いつから「映画秘宝」に?

 ◆洋泉社に入ったのは2006年ですが、2008年2月号から正式に月刊「映画秘宝」編集部員となったので、丸12年、計147冊の「映画秘宝」を作ったことになりますね。2012年11月号から編集長を務めています。

 休刊は、2019年12月の頭に、突然「1月21日発売号で休刊」と告げられました。青天のへきれきで腰が抜けました。洋泉社の定期刊行物は「映画秘宝」のみで、洋泉社が吸収合併される宝島社に刊行継続の意思がないためです。結果9人ほどいる編集部はいったん解散です。発行部数はそう多くはない少部数雑誌ですが、純利益は毎号確実に出ていました。洋泉社は小さな出版社のため、決して採算度外視の決算は許されない。1号でも単体で赤字決算が出た瞬間、即廃刊です。だから、編集長に就任してから毎日、至上命令であった「実売部数を伸ばすこと」と「映画秘宝」という唯一無二の映画媒体をなくさないこと。この2点を使命として、どうしたら売れるかだけを四六時中考えてきました。

 この10年で、全国の書店数は半減しました。それに足並みをそろえるように、雑誌媒体全体の実売も1997年をピークに下降線をたどり続け、2018年には半減しました。そんななかで、「映画秘宝」の売り上げは、20年以上変わらない。それどころか、特にここ1〜2年は、実売部数も、広告収入も、右肩上がりの絶好調でした。なかでも休刊号に至っては、「映画秘宝」大判化以降、過去最高の実売部数を記録するのは確実なので、絶頂期に優勝旗を持って引退するみたいで、お相撲さんとしては最高の花道だと思います(笑い)。

 ――過去最高実売数を記録して休刊というのは、確かに異例ですね。「映画秘宝」の編集は独特です。話題作、大作を取り上げながら、ほかの映画雑誌とは違った切り口で分析、解説してくれる。

 ◆「映画秘宝」は、元々娯楽映画マニア向け専門誌として、コアな娯楽映画ファンのハートをつかみました。しかしそこに安住していては、実売数はジリ貧を余儀なくされていたでしょう。その地点から読者の裾野をどう広げ、どう成長していくか? それが僕の仕事でした。結果「コアな映画ファン層」と「一般の映画好きの層」は両輪だという結論に達しました。どちらが大事ということはないんです。両方とも主軸だから等しく大事。同価値なんです。実売数が伸びた理由はそこにあると僕は確信しています。

 「映画秘宝」では…

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残り1850文字(全文3350文字)

勝田友巳

1965年生まれ。北海道大卒業後、90年毎日新聞入社。松本、長野支局などを経て学芸部で映画を担当。2016年から学芸部長。

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