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“一番売れてる映画雑誌”休刊の内幕(下) 「映画秘宝」元編集長が考えるSNS活用

「映画秘宝」最後の編集長となった岩田和明さん

 過去最高部数を“花道”に休刊した映画月刊誌「映画秘宝」。マニアックな娯楽映画ファンと一般の映画好き、両方をターゲットに誌面を作り、休刊まで部数は右肩上がり。紙媒体に特化する一方で、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を積極活用。ネットユーザーの認知と関心を引きつけ、雑誌購入に結びつけてきた。最後の編集長となった岩田和明さん(40)が語る部数拡張の戦略は、苦境にあえぐ出版界にとっても示唆に富むだろう。【勝田友巳】

 ――映画は間口が広いですから、ファンの層も広い。映画マニアと一般のファン、両方を楽しませる誌面作り、至難の業でしょう。

 ◆「映画秘宝」創刊編集長で、映画評論家の町山智浩さんが「映画よりも活字が面白くなければ、活字で映画を紹介する意味がない」と言っています。だから、読み物としての面白さは常に追求していますね。僕は、そのコンセプトをさらに押し進めて、読み物としての起承転結のストーリー性を特集内で構築することに注力しています。その特集自体が、まるで1本の娯楽映画のような、雑誌のなかでもうひとつの娯楽作品を読み物で作っているような感覚です。それは容易な作業ではないのでやはり、メイン特集の構成が最も難しく、苦しい。その一方で、超ド級の映画マニア層がニヤリと喜ぶような企画も、毎号きちんと用意しています。本誌のコンセプトは一般の映画好き層と映画マニア層は等価値ですからね。

 編集部員は、基本全員映画マニアなので、マニア向け記事のほうが断然作りやすいし、僕は彼らを信用して内容も任せているため、自由に作れるから楽しいんですよ。苦しい作業と、楽しい作業が両立している。そんな感じで、マニアもそうじゃない人も、同時に面白く読ませるというカオスな誌面作りを常に心がけています……って、まあ、今は無職ですが(笑い)。

 やはりメイン特集が受けると実売数が跳ねますね。買わずにいられなくなる特集企画を四六時中考えています。2019年も「平成の傑作映画100」(5月号)▽「歴代ジョーカー完全クロニクル」(11月号)▽すずさんの姿をのんさんが完全再現した表紙が世間の度肝を抜いた『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』特集(2020年1月号)――――などがヒットして、どれもほぼ完売しました。僕は、娯楽とは驚きだと考えています。だから読者をどう驚かそうかということばかりを考えていますね。

 一方で、読者に癒やしを与えたこともありました、「映画秘宝」なのに(笑い)。東日本大震災直後に発売した2011年6月号の「観(み)れば絶対に元気になる不屈の映画150」特集です。未曽有の自然災害が日本を襲ったけど、暗くならずに映画というフィクションの力を信じて明るく楽しく元気に前を向こうよというコンセプトの特集で、この号は読者を泣かせました(笑い)。後に「ニューズウィーク日本版」とかいろんな媒体でこの特集がパクられましたね。前述した「現象をすくいあげる重要さ」の最たる成果だと考えます。

 ――ネットで情報が簡単に入手できるようになって、映画雑誌はどれも苦戦しています。出版界もデジタル化にかじを切る中で、「映画秘宝」はネット展開せず、紙媒体だけで好調でした。

 ◆「映画秘宝」は紙に特化した媒体で、ツイッターの海外映画ニュース以外のネット展開は一切行っていません。編集部が小さく人手が足りないため、ネットに手が回らないというのが最大の理由なんですが、その現実を逆手に取って、雑誌を買って読むことでしか味わえない読み物を作ろうと潔く割り切っています。紙特化媒体という固有の特徴を押し進めた結果、固有のブランドイメージが強化できたうえに、実売数も確実に伸びました。紙媒体がネットに参入しても、老舗ネット媒体には勝てない。ライバル映画誌がどんどんデジタル化していくなか、だからこそ「映画秘宝」は紙にとどまっ…

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勝田友巳

1965年生まれ。北海道大卒業後、90年毎日新聞入社。松本、長野支局などを経て学芸部で映画を担当。2016年から学芸部長。

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