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大岡信と戦後日本

/21 『蕩児の家系』をめぐって 「言葉の宇宙」への射程長く

歴程賞の受賞が決まった大岡信を取り上げた本紙1969年7月1日朝刊2面「ときの人」欄

 1969年7月1日の毎日新聞朝刊2面に、笑みを浮かべた大岡信の写真が載った。話題の人物を紹介する「ときの人」欄に、「『蕩児(とうじ)の家系』で歴程賞をもらう」詩人として取り上げられた。『蕩児の家系』は初期の代表的な詩論であり、おそらく戦後に書かれた詩論の中で最もよく読まれたものの一つだろう。

 まずタイトルが興味をそそる。「あとがき」の最初で自ら「風変りな題名」としたうえで、「いうまでもなく、<蕩児の帰郷>という例の物語に由来する」と書いている。聖書以来、西欧の文学者や画家により繰り返し扱われたテーマで、動脈硬化に陥った伝統が、いったん家を飛び出した「放蕩息子」によって蘇生してきた歴史の比喩である。

 ところが「日本の詩の場合は、事情が少々違っていた」。明治期以降の日本の近代詩人は「のっけからみな放蕩息子」で、「短歌、俳句のような旧家に格別気がねすることもなしに郷里をとびだし、きょうはヨーロッパ、あすはアメリカと放浪を続けてきた」。だが、「ふと気づいてみると、帰るべき故郷がなかった」という見立てだった。

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