メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「遠慮なく雑談できる場を」 吃音当事者自助団体、香川に3月設立へ 吃音の記者が取材

「第2回香川吃音のつどい」で講演する岡部健一さん=高松市で2020年1月19日、佐々木雅彦撮影

[PR]

 どもっても互いに遠慮なく雑談できる場をつくろう――。吃音(きつおん)当事者の自助団体「香川言友(げんゆう)会」が3月、香川県内に設立される。言友会は31都道府県にあるが、これまで香川にはなかった。吃音とは、どもってスムーズに話せない言語障害の一つ。人前で話すことを恐れ、コミュニケーションを避けて生きる人もいる。私(54)にも吃音がある。設立に向けた活動に記者兼当事者として参加し、吃音に悩む人たちの願いを取材した。【佐々木雅彦】

 香川に自助団体を作りたいと声を上げたのは、高松市の会社員、山下千英さん(39)だ。2019年初めに、各地の言友会を束ねるNPO法人全国言友会連絡協議会(全言連)に相談、全言連が同年9月、「まず賛同者を募ろう」と「第1回香川吃音のつどい」を開いたところ、約65人が集まった。当事者以外にも、吃音者を支援する言語聴覚士も参加した。つどいを計3回開いて、設立メンバーを集めることになった。これらの経緯を私は、19年12月に「吃音・分かち合える場を 香川『つどい』ができるまで」と題し、2回に分けて記事にした。今回はその続報だ。

 第2回つどいは1月19日に高松市内であり、「吃音相談外来」のある旭川荘南愛媛病院(愛媛県鬼北町)院長の岡部健一さん(67)の講演があった。岡部さんも当事者で、愛媛言友会の創設者でもある。

 吃音相談外来は5年前に開設した。岡部さんが対話を通して、悩みや困りごとを聞き取っていくそうだ。その上で、どもることから生じるストレスへの対処法「認知行動療法」を試みる。症状が重い人には、言語聴覚士に発話訓練を指示し、必要に応じて障害者手帳取得のために診断書を書く。診断書を書いてくれる医療機関はまだ、全国で数カ所しかないという。

 私は認知行動療法に興味が湧いた。岡部さんは「ものの見方や考え方が変わると、気持ちや行動が変化します」と説明した。例えば、「どもるとからかわれるから、相手に意見が言えない」と普段思っていても、「相手は本当にいつもからかうのか?」と、自問する。「ちゃんと話を聞いてくれたことがある」と考え方を変えれば、「今度、意見を言ってみよう」と前向きになれる。

 私の吃音は、一呼吸置いてから話し出したり、別の言葉に置き換えたりして、周囲には気づかれない程度だ。それでも何人かで雑談する場合、気の利いた一言を思いついても、どもりそうになったら、発言をやめることがある。岡部さんの説明を聞きながら、「どもりながら切り出したら、その場は本当にしらけるのか」と自問してみた。難しいのだけれど気軽に明るくどもることができれば、すんなり受け止めてくれるかもしれない。

 「吃音自体をなくすことは難しい。格闘すればするほど、悩みは深くなる」と岡部さんは指摘する。それならどうしたらいいのか。「変えられないことは受け入れよう」。これが岡部さんの基本姿勢のようだ。もっと知りたくなった。

 1月末、同病院に行って岡部さんに改めて取材した。

 岡部さんは小学5年生の時に吃音を初めて意識したそうだ。大学は医学部に進学。民間矯正所や催眠療法にも頼ったが効果はなく、「変えられないことは受け入れよう」と切り替えた。言える言葉に置き換えるといった「ごまかしながら話す」ことを覚え、会話に不自由を感じなくなった。

 卒業後は内科医となり、院長として赴任した南愛媛病院で15年、念願の吃音相談外来を開設した。取材の最中に、岡部さんの携帯に受診者から電話がかかってきた。岡部さんは「元気にしてる?」と寄り添うように話し始めた。

 岡部さんの話しぶりは滑らかで、吃音は「治っている」かのようだ。でも今も、会議で書面通り読まないといけない時などは、例えば「事務局に任せます」が「じじじむきょく」になることがあるのだという。

 「治る」とは、どの段階を指すのだろうか。どもってもコミュニケーションが取れれば、「治った」と言ってもいいのではないか。

 第2回つどいでは岡部さんの講演の後、参加者約50人が4グループに分かれて互いに自己紹介し、最近の悩みを語った。私が入ったグループの若い女性は涙ぐみながら話していたが、他の人の話を聞くうちに笑顔になっていった。別のグループでも同じようなことがあったそうだ。

 つどい終了後、参加者アンケートを見せてもらった。「大勢の人の話を聞けて気が楽になった」「息子がここまで悩み苦しんでいたと知ることができた」……。みんな、ほっとできたのだと思う。

 私はつどいで、香川県さぬき市職員の古市泰彦さん(51)と知り合った。古市さんは05年に香川で言友会を設立しようと活動をしたものの、賛同者が集まらず断念した経験を持つ。

 そんな話を私は1月24日に古市さんに取材し、聞いた。どもり始めたのは小学3年生の時で、次第に「言葉を回す」ことができるようになったという。最初の言葉を後回しにして結論を先に言うといった工夫だ。約20年前から岡山言友会に参加し、世の中が明るく見えるようになった。

 古市さんは、そんな場を香川につくりたいとずっと思ってきた。

 「つどいには若い人がたくさん来ていました。自分の若い時にも語り合える場があったら、もっと楽に生きられたでしょうね。『こんな場があるよ』と、当事者はもちろんのこと、学校や幼稚園の先生にも知ってほしい。たくさんの人が救われると思うのです」

 私は小学低学年の時、どもることでからかいの対象になった。母も、私の症状を治そうと必死だったと思う。今思えば、言友会のような場が欲しかった。

 第3回つどいは3月8日午後1時50分から、高松市民防災センターで開き、香川言友会設立を宣言する予定だ。

吃音と2次障害

 吃音は特定の言葉が出づらかったり、出せなかったりする症状。例えば「おはよう」が「おおおはよう」(連発)、「おーーはよう」(伸発)、「……おはよう」(難発)などとなる。100人に1人が持っているとされる。人との接触を回避するようになると、多くの人が「社交不安障害」(対人恐怖症)を発症し、うつ病を合併するケースも。原因は特定されておらず、確立された治療法はない。

2020年3月8日に開く「第3回香川吃音のつどい」のチラシ=全国言友会連絡協議会提供

言友会

 「吃音を治す」のではなく「吃音があっても豊かに生きる」ことを基本理念とする当事者の自助団体。互いに体験を分かち合うことで、「自分は一人ではない」と気づき、あるがままの自分を受け入れられるようになることを目指す。現在、31都道府県で活動している。NPO法人「全国言友会連絡協議会」が各会を束ねており、毎年、全国大会も開いている。

吃音相談外来

 旭川荘南愛媛病院の「吃音相談外来」は岡部健一院長が担当し、毎週水・木曜の午後診療で予約制。問い合わせは同病院(0895・45・1101、ファクス0895・45・3326、minami-ehime@asahigawasou.or.jp)。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 首相、大規模イベント中止・延期を要請 3月中旬まで2週間

  2. 「感染者2校以上確認で全府立学校を14日間休校」大阪府コロナ対策本部会議

  3. 岐阜県で初の感染者1人 新型コロナ

  4. 「支援物資の恩返し」武漢を代表し渋谷でマスク配る かぶり物の中国人女性話題に

  5. オリックス生命 新宿拠点の700人超を在宅勤務に 協力会社員が新型コロナ感染で

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです