『キネマ/新聞/カフェー 大部屋俳優・斎藤雷太郎と「土曜日」の時代』=中村勝・著、井上史・編
毎日新聞
2020/2/9 東京朝刊
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(ヘウレーカ・2750円)
都市で多い通勤通学手段は、東京や大阪は電車、多くの地方都市で自家用車。京都だけは、自転車が極端に多いとか。そんなサイズに分厚い知的伝統を蓄積する都市で、1936年から1年4カ月刊行された「伝説」の「反ファシズム」週刊新聞が、『土曜日』だ。その仕掛け人、斎藤雷太郎の伝記である。
京都が多くの撮影所を擁した時代。大部屋俳優が左翼運動と接点を持ち、独自の媒体づくりに乗り出す。そこに自由主義的な知識人らが加わり、週刊新聞の誕生となる。庶民を対象とした平易な文章。喫茶店に置いてもらい読者を増やした。文化評論や投稿の充実した紙面は、京都中の評判に。黒字経営で、副題は「憩いと想いの午後」。声高に反戦を叫ぶより、検閲に抵触しないよう注意を払った。いわば、『土曜日』を巡る「コミュニティ…
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