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日本球界に咲いた「月見草」 ヤクルト黄金期率いた名采配と「再生工場」 野村克也さん死去

野村克也さん=東京都千代田区で2017年8月31日、根岸基弘撮影

 野村さんがプロ野球の監督として最後のリーグ優勝、日本一にも輝いた1997年のヤクルトを担当した。キャッチフレーズのID野球に磨きがかかり、他球団でくすぶっていた選手を引き取っては貴重な戦力に化けさせる「野村再生工場」も本格稼働、ヤクルト黄金時代を率いる名将として貫禄十分だった。

 今も語り継がれる同年の巨人との開幕戦で、4年連続開幕戦完封を狙った斎藤雅樹から小早川毅彦が放った3打席連続本塁打。前年わずか1安打、広島を自由契約になった小早川にこう暗示をかけたという。「お前は新しい場所でいい運があるんだ」。法大1年の時に4番を務め、東京六大学秋季リーグ制覇、広島1年目も優勝と新人王に輝いた元スラッガーが奮い立った。

1997年度日本シリーズ「ヤクルトスワローズ・西武ライオンズ第5戦」ヤクルトが万全の継投策で西武を零封、4勝1敗で2年ぶりにシリーズを制し、野村克也監督を胴上げするヤクルトナイン=東京・神宮球場で

 生え抜き組では捕手・古田敦也への指導が印象深い。負けん気の強い性格を見越し、勝負球を打たれるとダッグアウトでねちねち説教し、試合後にも「古田のリードが悪い」とこき下ろした。古田は見返してやろうと配球に工夫を重ね、球界を代表する名捕手に。セ・リーグのライバル監督たちを「古田のリードにやられた」と再三嘆かせた。

混セの天王山となるヤクルト対巨人の3連戦の2戦目、投手起用が思惑通りいかずベンチで憮然とするヤクルトの野村克也監督(奥)。手前は古田敦也捕手。試合は2対9敗れた=神宮球場で1992年9月2日、中村琢磨撮影

 選手の長所を引き出す采配は、捕手としてマスク越しに鍛えた観察眼のたまもの。加えて人間を見る目の確かさ、洞察力が支えていた。人気で劣るパ・リーグ一筋に歩んだ現役時代の鬱屈。テスト生から3冠王へとのし上がる中で感じたであろう周囲の嫉妬とやっかみ。元南海監督・鶴岡一人との確執……。それら複雑な感情がもつれ合った土壌に咲いたのが、本人言うところの「月見草」だったのだろう。

 監督時代も、「ひまわり」のごとく華やかに、かつスマートにユニホームを着こなすONに対抗するかのように、野村さんのユニホームの背中はいつも丸まり、グラウンドをとぼとぼ歩いた。97年のシーズンはその姿すら得意げに映った。

 名捕手、強打者として昭和のプロ野球を沸かせた後、社会人野球を含め名監督として平成の野球を盛り上げた。グラウンド内にとどまらず、数々の著作に残した通り、「言葉のスポーツ」としての野球の楽しみ方も説いた。紛れもなく日本球界の大功労者である。【大矢伸一】

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