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六代目神田伯山の真打ち昇進襲名披露興行スタート 伯山が「中村仲蔵」に込めた思い

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終演後に記者会見に応じた六代目神田伯山=東京都新宿区の新宿末広亭で2020年2月11日、濱田元子撮影
終演後に記者会見に応じた六代目神田伯山=東京都新宿区の新宿末広亭で2020年2月11日、濱田元子撮影

 「見事な役者に化けやがった」「こんな芝居見たことない」――。2月11日、東京の新宿末広亭で始まった松之丞改め六代目神田伯山の真打ち昇進襲名披露興行の大初日、伯山は第一歩のネタに「中村仲蔵」を選んだ。

 「やっぱりね」。伯山を追っかけてきたファンは誰しもそう思ったに違いない。江戸時代に実在した歌舞伎俳優、中村仲蔵の芸道出世譚。いわゆる歌舞伎の名門の血筋ではない「血のない役者」が、己の才覚のみで出世していく物語だ。ギリギリと執念をたぎらせる仲蔵の造形が、演者とこれほど重なる物語があるだろうか。

 終演後の記者会見で「自分の気持ちを投影しやすいかな。マクラではなく、ネタの中で自分の気持ちを伝えることができたら一番ヤボじゃなくていいかな」と明かした伯山。仲蔵への「日本一!」の声が、そのまま伯山への「日本一!」の声となった。

 間違いなく、演芸史に残る一日になった。何もかもが異例づくしだ。二つ目時代から、ラジオとテレビでレギュラー番組を持ち、独演会はチケットの取れない状態に。さまざまなメディアがこぞって取り上げ、講談界のみならず時代の寵児(ちょうじ)である。この歴史的な「トキ」を共有しようという、披露興行の盛り上がりを見越して、通常は昼夜通しの末広亭も入れ替えに。チケットは前売りではないので、当日の朝の時点で180人が並び、一番乗りにいたっては前日午後3時から並ぶという徹夜組まで出た。楽屋入りする伯山に「六代目!」「おめでとう!」の声がかかる。2階も開けて、立ち見もぎっしりの満席状態。午後5時の開演から、異様な興奮と熱気に包まれた。

 トリの伯山へ向けて、演者が次々と伯山ネタをかぶせていくのも寄席というリレー形式の面白さだ。浪曲の玉川太福は「神田伯山物語」で六代目の知られざる(?)一面を明かし、姉弟子の阿久鯉は柳沢吉保が主人公の「柳沢昇進録」からのおめでたい出世噺の一席でエールを送る。

 中入り後の口上は師匠で人間国宝の神田松鯉、落語芸術協会会長の春風亭昇太、桂米助、毒蝮三太夫、司会の三遊亭遊雀が並んだ。松鯉は伯山を「時代を開拓する力があるんじゃないか。自分で時代を作り上げていく努力をし…

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