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新型肺炎、広がる不安 電話相談、連日1000件 「中国人とすれ違った」「人混みに」

新型コロナウイルスに感染した可能性のある患者を受け入れる準備をしている都立駒込病院の職員=東京都文京区で2020年2月6日、熊谷豪撮影

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 中国を中心に広がる新型コロナウイルスの感染を心配する人らが医療機関に相談するケースが相次いでいる。普通の風邪と症状が似ていて見分けがつきにくいうえ、厚生労働省もウイルス検査の対象を中国湖北省とつながりのある人に原則限っているため、不安が広がっているとみられる。政府は簡易検査キットの開発を進めるが、実用化にはまだ時間がかかる見通しだ。院内感染の危険性も示唆されており、今後、患者が増えれば混乱に拍車がかかる恐れもある。

医療機関も困惑

 「ショッピングセンターで中国人とすれ違った。検査してくれないか」。沖縄県立中部病院(沖縄県うるま市)には、住民からこんな問い合わせが1日に4、5件は寄せられる。高山義浩・感染症内科副部長は「症状が出ていなければ、受診は不要なんだが」と困惑する。今後は国内患者が増える可能性があり、「新型コロナウイルスは高齢者や持病のある人だと重症になりやすい。薬の処方日数を増やす取り組みなどを始めた」と話す。

 厚労省が1月末に開設したコールセンターにも、連日約1000件の相談がある。「数日前に人混みに行った。その後、熱が出て、喉が痛い」といった不安の声が多い。ただし、これまでの検査で中国湖北省とつながりのない感染者は見つかっていない。

 東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は「流行が起きた時、軽症の人も大病院に詰めかけ、重症者への対応ができなくなる事態は避けなければならず、冷静に行動してほしい」と話す。

新型肺炎の検査機器(PCR法)=岐阜県提供

 厚労省は現在、①発症前14日以内に湖北省に渡航か居住するか、渡航か居住した人と濃厚接触し、37・5度以上の発熱や肺炎など呼吸器症状がある②発熱か呼吸器症状があり、感染者と濃厚接触した③渡航歴にかかわらず発熱や呼吸器症状があり、入院する必要がある――人を対象に検査をしている。中国を中心に感染が広がる現状を踏まえて政府は12日、基準外の場合も柔軟に検査すると対策本部で改めて強調した。

 患者の受け入れ準備を進める医療機関も出てきた。東京都立駒込病院(東京都文京区)は一般外来の入り口に掲示を出し、感染者かもしれない患者は、院内感染を防ぐ目的で専用の診察室がある窓口に移動するよう促している。

 院内感染をうかがわせる事例報告もある。米国医師会雑誌(JAMA)に7日発表された論文によると、武漢大中南医院に入院した感染者138人のうち、41%に当たる57人が院内で感染した。感染の初期の症状が他の病気と区別しにくい可能性があるといい、感染予防が不十分だったと考えられる。ある感染者は腹部の症状で外科に入院。感染が疑われていなかったと考えられ、外科で働く10人以上の医療従事者にうつしたとみられるという。

新型コロナウイルス検査の流れ

 国内でも、横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で検疫業務に従事した男性検疫官1人の感染が12日に判明した。厚労省は「検疫官の感染事例は過去に見つからなかった」という。検疫官は船が到着した3日夜から4日夜に乗客の体温測定や、健康状態を調べる質問票の回収をしていた。世界保健機関(WHO)の指針に基づき、長袖ガウンや使い捨て手袋、サージカルマスクを着用し、手指をアルコール消毒するなどして業務に従事していた。一般に感染が疑われる人や感染者と近い距離で接するため感染リスクが高い環境にある検疫官は予防策の徹底が重要で、厚労省の担当者は「必要な予防策をとるよう配慮してきたが、改めて確認し徹底していきたい」と話す。

 今後は感染の広がりに備え、空港や港での水際対策だけでなく、治療体制の構築が重要だ。政府は帰国者や、感染者と接触した人を診る専門外来を全国約340カ所の医療圏ごとに1カ所以上設け、個室が確保できれば一般の医療機関での入院も認める。ただ、全ての医療機関が感染者の受け入れ態勢を整えられるわけではない。院内感染についても、日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は「何としても避けたい」と記者会見で述べ、受診前に保健所や医療機関に電話相談するよう呼びかけた。【御園生枝里、小川祐希、金秀蓮、熊谷豪】

簡易検査キット、早ければ3月

 新型コロナウイルスの感染者が増え、政府は検査体制を拡充する方針を示した。比較的短時間で感染を判断できる簡易な遺伝子検査キットが必要となり、国立感染症研究所(感染研)を中心に開発を急いでいる。

 中国は1月、新型ウイルスのゲノム(全遺伝情報)を公表、各国が検査キットの開発を進める。日本の感染研も1月、国内で感染が確認された患者からウイルスの分離に成功。開発中の簡易検査キットなどが有効かどうかを検証し、早ければ3月中の完成を目指す。

 感染確認にはウイルスの遺伝子検査で、特徴的な塩基配列の有無を調べる必要がある。現在、用いられているのは「PCR法」と呼ばれる手法だ。

 対象者から採取した検体に、ウイルスの遺伝子情報の一部を用いた試薬を入れ、加熱と冷却を繰り返す。検体に目的のウイルスが含まれていれば特徴的な塩基配列が増幅され、感染が確認できる仕組みだ。

 ただPCR法には大がかりな専用の機器が必要で、加熱や冷却といった検査手順も煩雑だ。結果の判明には6時間程度かかり、検査できる機関も感染研や都道府県の地方衛生研究所などに限られていた。政府は検査キット開発と並行して既存の検査体制も強化する方針で、12日以降は民間会社にも委託。検査能力は1日最大300件程度だったが、18日までには1000件超に増える見通しだ。

SARSで威力「1時間以内で結果」

 2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では感染研が中心となり、空港や一般の病院でも使える簡易検査キットを開発した。技術はPCR法よりも短時間で調べられる「LAMP法」で、当時の手法を応用して開発を進めているとみられる。

 LAMP法では、検体に特殊な酵素を含む試薬を加えることで塩基配列を素早く増幅し、専用の検査機器を使わずに目視で結果を確認できる。検査時間も短縮でき、おおむね1時間以内で結果が得られるという。

 今回の新型コロナウイルスの場合、遺伝子検査で一度は陰性と判断された人が再検査で陽性とされたケースが相次いでいる。感染の初期段階ではウイルスが鼻や喉付近にとどまり、ウイルスの量も少ないため、PCR法でうまく増幅できなかったとみられる。

 気道の奥や肺まで感染が進むと、ウイルスが急に増えるため、この段階でたんを検体として採取すれば、より確実に陽性と判断しやすくなるという。厚労省は1月31日に医療関係者向けの検査マニュアルを改定。遺伝子検査の際に「できる限り」と規定していた、たんの採取を必須項目に追加した。【五十嵐和大】

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