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終わらない氷河期~疲弊する現場で

2019年7~9月に連載した「終わらない氷河期~今を生き抜く」では、氷河期世代が就職に失敗し、病気や引きこもりなどに苦しむ姿を描きました。その続編として今回は、非正規化、合理化で劣化する各労働現場で疲弊する同世代の人生を取り上げます。規制緩和や制度改悪などが進む各業界特有の事情も別稿で解説します。

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終わらない氷河期~疲弊する現場で

日雇いバイト7年、ようやく正規職員になったが・・・ 42歳介護福祉士の不安

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 高齢化社会の進行とともに増える介護職。役割は注目されているにもかかわらず、労働環境が良くないと敬遠され、現場は人手不足が続く。ここでも、就職氷河期世代の女性が苦しんでいる。

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 「何にもない町なんですよ」。今にも降り出しそうな曇り空の下、とうに収穫を終えた稲株ばかりの田んぼを見つめ、山本恵さん(42、仮名)は自嘲気味に語った。高齢化と人口減少が加速する首都圏郊外のある市。最寄り駅から車で十数分、田畑の中にぽつんとたたずむ介護施設が、山本さんの職場だ。8年前に就職し、ここで介護福祉士の資格を得た。毎日、1駅向こうから自転車で通う。体力的にきつい過酷な勤務、ハラスメント、低賃金………。介護職の現場は厳しい。ここにたどり着くまでに、非正規の仕事を繰り返してきたため「昔を思えばまし」と自分に言い聞かせるが、それでも先の人生を考えると、不安は尽きない。

親の離婚、母の病、いじめ……中卒で就職

 大手企業に勤めるサラリーマンの父、専業主婦の母の間に長女として生まれた。妹、弟も生まれたが、父が母に暴力を振るい、家に金を入れず食事にも苦労した。小学校入学後に父母は離婚。母とともに千葉県内の祖父母宅に一時身を寄せた。やがて母は看護師資格を取得し、埼玉県内の病院に就職。病院の近くに引っ越した。おとなしい性格だった山本さんは、転校の連続で新たな環境になじめず、「ばい菌」と呼ばれていじめられた。

 小学5年の時には、今度は母親が膠原病(こうげんびょう)を発症して入退院を繰り返し、うつ病にもなって仕事ができなくなった。生活は祖父母の年金頼みに。中学進学後もいじめはやまず、1学期のうちに不登校に。家族で別の市営団地に引っ越し、転校してかろうじて通学したが、「人と話せない」状況が続いた。生活苦は変わらず、中学を卒業したら働くしかなかった。

日雇いバイトを7年「休日は元日だけ」

 中卒では求人もほとんどなく、やっと山菜工場の仕事を見つけた。17歳で一念発起し、定時制高校に進学。昼間は工場で働き、給料で学費、給食費をまかない、奨学金を得て卒業した。21歳からパソコンの部品工場で2年働き、24歳で特別養護老人ホームのパート勤務に移る。月15万円ほどの給与で、重労働のため腰を痛めて退職した。「もっと環境がいい職場で働きたい」。26歳の時、ハローワークに通ったが、当時はまだ景気低迷期で、就職…

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