応援レシピ広がる 台風19号被災農家のリンゴでフランス菓子 「復興の力に」シェフが公開 /長野

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食事会で料理を盛り合わせる(左から)クレール真理さんと神谷隆幸さん=長野市北石堂町のオステリア・ガットで 拡大
食事会で料理を盛り合わせる(左から)クレール真理さんと神谷隆幸さん=長野市北石堂町のオステリア・ガットで
食事会に参加した支援者に料理を配る徳永虎千代さん=長野市北石堂町のオステリア・ガットで 拡大
食事会に参加した支援者に料理を配る徳永虎千代さん=長野市北石堂町のオステリア・ガットで

 台風19号で被災した農作物を料理人が創作料理で支援する「被災地農家応援レシピ」が広まっている。フランス南部ニース在住のシェフ、神谷隆幸さん(41)がツイッターでリンゴを使った菓子のレシピを公開したのを機に、国境を越えて日本各地の料理人も相次いで協力している。【島袋太輔】

 「被害に遭われた農園のりんごをまだ買えるならそこで買ってタルトタタンを作ってくれたらちょっとうれしいです。たくさん消費できるので」

 台風19号が甚大な被害をもたらした2019年10月、神谷さんはツイッターに被災地のリンゴ購入を促すツイートを投稿した。購入者には、コンフィチュールの世界大会で1位に輝いた妻クレール真理さん(29)の、リンゴを使ったフランス菓子「タルトタタン」の秘伝のレシピを渡すと伝えると、一気に拡散。日本の料理人やパティシエも同様にレシピを公開する被災地支援のムーブメントに発展した。

 長野市赤沼でリンゴ農園を営む徳永虎千代さん(27)は、農地の8割以上が浸水被害を受けたが、神谷さんのツイートの後に購入の問い合わせが相次ぎ、今秋分の予約販売も含めて1トンが売れたという。徳永さんは「料理人にとってレシピは門外不出のすごく大切なもの。それを公開してまで被災地を支援してくれるなんてありがたい」と感謝する。

 神谷さんが被災地を支援しようと思ったのは、16年に花火見物の群衆に大型トラックが突っ込み86人が犠牲となったテロを経験したからだ。高級リゾート地のニースで店を営んでいたが、シーズン真っ最中にテロが発生。風評被害などで客足が遠のき、店を閉じた。神谷さんは「自分の力ではあらがえない気持ちは痛いほど分かる。同じく絶望を味わった身として、(農作物を買うことで)復興に貢献したい」と話す。

 台風被害を受けた千葉県などの農作物でも同様の動きが広がっている。より継続的な被災地支援を目指すため神谷さんは、料理人らで農家を支援する団体「#CookForJapan」を設立するまでに至った。被災地の農作物を使った商品開発や農家ツアー開催などを目指す。神谷さんは「農家と料理人が協力して支援することで、農家を志す次の世代の希望になってほしい」と願う。

食事会も盛況

 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で始まった被災地支援のムーブメントは、現実の動きにまで発展した。2月上旬には、神谷さんが長野市を訪れ、被災を免れたリンゴを使った食事会を開くなど、復興に向けて農家と料理人が本格的に手を組み、歩み始めている。

 8日夜、同市北石堂町のイタリア料理店「オステリア・ガット」に、信州産の食材を使った料理が並んだ。信州サーモンや信州プレミアムビーフ、福味鶏――。神谷さんらが腕を振るったメニューで、豊野地区で収穫された人気品種「サンふじ」の菓子も提供。参加者の舌をうならせた。

 食事会は、徳永さんらリンゴ農家などでつくる「長野アップルライン復興プロジェクト」が主催した。被災地の農家を支援するためクラウドファンディング(CF)を実施し、その支援者を招待。7~9日の3日間開催し、東京など主に県外から約80人が訪れた。

 東京都文京区の40代女性は、神谷さんのツイートを見て、徳永さんのリンゴを3キロ購入したという。「被災地を支援しようにもどうしたらいいか分からなかった。食べ物を買ってレシピももらえるのは、分かりやすかった。タルトタタンは大量のリンゴが必要で、たくさん購入できました」と支援に関わりやすかった点を強調した。

 食事会の合間、神谷さんは千曲川の堤防が決壊し、リンゴ畑が浸水被害を受けた同市長沼地区を訪問。「こんなに被害が広範囲になっているとは思わなかった。写真で見るだけでは分からない光景を見ることができた」と被災地の農家支援の決意を新たにした。

 支援の輪は料理人だけにとどまらない。同店を運営する「坂城葡萄酒醸造」の成沢篤人社長は今回「被災地のため何か行動しなければいけない」と店舗を無償で提供した。坂城町の契約農家のリンゴを使ったワインなどもメニューに並んだ。

 徳永さんは「リンゴは生で食べるのが一番だけど、(神谷さんらの料理は)それ以上のインパクトがある。リンゴの新しい選択肢を増やしてくれた皆さんには感謝しきれません。次期収穫の励みになります」。「食」に携わる人々の、復興への道のりが始まった。

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