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余録

「ヒトほどの大きさで…

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 「ヒトほどの大きさで、シカの頭と長い尾があり、鳥のように後脚で立つが、カエルのようにはねる動物」。17世紀、東インド会社の船で帰国したオランダ人の報告を、周囲は絵空事と受け止めた▲ほらでないと分かるのは約100年後、クック率いる南洋探検隊がオーストラリアに上陸してからだ。早い時期に他の大陸から切り離され、生物が独自に進化した豪州は、子どもをおなかの袋で育てる有袋類の宝庫だった▲冒頭のカンガルーをはじめ、コアラやウォンバットなどが先住民と共存する楽園は、移住者によって一変する。畑を荒らす害獣、時には射撃訓練の標的として殺された。1906年の1年間だけで20万匹のコアラと25万匹のオオカンガルーが消えたという(「世界動物発見史」平凡社)▲いま、豪州が対峙(たいじ)する敵は「気候危機」である。83年に南部ビクトリア州で発生した森林火災は75人の命を奪った。2009年の火災では173人が犠牲になったとされる。昨年からの火災はそれを上回る規模で広がった▲今月上旬の豪雨で火災は峠を越したとみられるが、油断はできない。高温、乾燥、火災、洪水は、科学者たちが地球温暖化の影響として予測した通りだ。打ち続く災害を聖書の「黙示録」に重ねる論評も少なくない▲今回の火災で死んだ動物は10億匹以上に上る。試算したシドニー大の研究者は豪州を、迫る危険をいち早く知らせる「炭鉱のカナリア」に例えた。自然は征服できると考える人間の傲慢さを省みる時だろう。

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