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社説

日鉄の呉製鉄所閉鎖 地域への打撃を抑えたい

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 「鉄は国家なり」とうたわれた巨大産業の苦境がここまで来たかとの印象だ。国内鉄鋼最大手の日本製鉄が2基の高炉を持つ広島県の呉製鉄所を2023年9月末までに閉鎖すると発表した。

 日本の鉄鋼業界は近年、国内市場の縮小と原料価格の高騰、中国企業の過剰生産による製品価格の下落という「三重苦」に見舞われてきた。

 米中貿易戦争の影響で海外の鋼材需要も低迷する中、日鉄は09年に火入れしたばかりの和歌山製鉄所の高炉1基も休止するなど、過去最大規模の合理化策を打ち出した。

 1962年に高炉の操業を開始した呉製鉄所は、戦艦大和を建造した「呉海軍工廠(こうしょう)」の跡地に建つ歴史ある存在だ。協力工場を含めて3000人を超える従業員が働く。

 さらに、周囲には金属加工など下請けの中小企業が集積する。設備の補修や運送業者なども含めれば、製鉄所の関連雇用は数万人にのぼる。

 日鉄は希望退職は募集せず、配置転換などでグループ従業員の雇用を守るという。だが、下請け企業の先行きは不透明だ。

 過去に日鉄幹部が呉製鉄所の存続方針を示していた経緯もあり、地元では「寝耳に水だ」などと動揺が広がっている。

 鉄鋼業界は戦前戦後を通じて日本経済をけん引してきた。しかし、85年のプラザ合意後の円高や90年代のバブル経済崩壊、00年代からの韓国、中国メーカーの台頭など厳しい逆風にさらされ、「鉄冷え」の時代に突入した。

 大手各社は日鉄の前身である旧新日本製鉄と旧住友金属工業の合併や、旧川崎製鉄と旧NKKの統合によるJFEホールディングスの誕生など再編で苦境に対応してきた。この過程で70年代には70基程度あった国内の高炉は30基以下に減った。

 一方で、これまでは地域への影響も考慮して有力製鉄所の閉鎖には手を付けてこなかった。今回の日鉄の決定はそんな「聖域」さえ守れなくなった時代が来たことを意味する。

 ただ、製鉄所の廃止が避けられないとしても、長年支えてきた地域への打撃は最小限に抑えたい。自治体と連携して下請け企業の経営転換や雇用確保を支援すべきだ。国も後押しする必要がある。

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