連載

終わらない氷河期~疲弊する現場で

2019年7~9月に連載した「終わらない氷河期~今を生き抜く」では、氷河期世代が就職に失敗し、病気や引きこもりなどに苦しむ姿を描きました。その続編として今回は、非正規化、合理化で劣化する各労働現場で疲弊する同世代の人生を取り上げます。規制緩和や制度改悪などが進む各業界特有の事情も別稿で解説します。

連載一覧

終わらない氷河期~疲弊する現場で

私も不安定なのに…人の就職相談を受けるやりきれなさ 非正規ハローワーク相談員

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 仕事を探す人たちの手助けをする国の機関ハローワーク(公共職業安定所)。しかし、そこに勤める相談員の多くが、非正規の公務員だ。自らも不安定な身分なのに、人の就職相談に応じる矛盾。かつて就職氷河期を経験した女性は、やりきれない思いを抱えながら、窓口で仕事に当たっている。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】

 午前6時、高校生と中学生の子どもたちの弁当作りから一日が始まる。朝食の片付けを終え、シフト制で勤務する千葉県内のハローワークに出勤する。午前11時、前日の相談者の集計作業を始め、合間に相談者が次々に訪れる。若者向けの窓口で、山岸薫さん(47)=千葉市=は非正規の相談員として勤務する。「もう何社受けても決まらない」「自分なんかどうせだめ」――。「売り手市場」とされるが、悩みや劣等感を吐き出す学生も多い。相談時間は30分の基準を超え、相談が終わると、さまざまな書類の処理や資料作りをこなす。1日6時間半の労働時間を超えても、残業はできず、時間内に仕事を終わらせないといけない。山岸さんが相談員になった6年前、同僚は約10人いたが、今は6人。任期は1年。毎年、年度末が近づくと、気持ちが落ち着かない。

就職氷河期初期、いっぱいだった求人票は2、3枚に

 北陸地方の出身。中学2年のころ、対人関係に悩み、部活をやめ、勉強にも力が入らなくなった。心の支えは、ロックバンド「BООWY(ボウイ)」だった。「カースト(階級)社会の上の部分ではなく、社会的弱者にメッセージを届けているみたいな歌詞が好き」。音響の技術職を志し、1991年に大阪府内の専門学校に進学。しかし、卒業した93年春は、既に就職氷河期に入っていた。「数年前まで求人票でいっぱいだったと聞いていた掲示板に、求人票は2、3枚だけ。学歴も低いし、これくらいしかないんだなと思った」。15社に履歴書を送り、面接に進めたのは2社。周囲からは「決まっただけいい」「上を望むなんてとんでもない」と言われた。

 21歳で大阪府内の従業員約10人の映像制作会社に入社した。正社員でAD(アシスタントディレクター)として働き、毎日午前6時に自宅を出て、帰りは午後11時。月収は手取り10万円弱。郊外に家を借り、4・5畳、風呂なし、トイレ共同。家賃は1万5000円。過酷な労働環境に「おかしいと声を上げる従業員はいなかった」。現場で一緒になった大手テレビ…

この記事は有料記事です。

残り3381文字(全文4379文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

注目の特集