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坂村健の目

東洋大情報連携学部(INIAD)の坂村健学部長が科学の視点でつづるコラム。

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正しく恐れる、ということ

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 明治中期から昭和初期の物理学者で随筆家としても有名な寺田寅彦は「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」と書いた。東日本大震災での原発事故について多くの科学的でない言説が流れ、風評被害や被災者差別につながるなどした。そこで「感情でなく科学知識を持って状況を正しく理解し恐れるべし」という戒めとして彼の言葉が見直された。

 もちろんこの言葉自体は中立で、恐れるべきときに恐れないこともまた「正しく恐れる」に反する。そこで問題は、何が「正しい」かだ。放射能のようなよくわかっている物理現象と違い、生物は少し遺伝子が変わるだけで大きく違う「新型」になりうる。新型コロナの研究は進んでいるものの、残念ながら何が「正しい」かをはっきり言えるところまではきていない。

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