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新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から、検査で陰性と確認された乗客の下船が続いている。
乗客からはきのう、初の死者が出た。日本政府の一連の対応をめぐって、国内外から批判も出ている。感染拡大を防げなかったことについて、徹底的な検証が必要だ。
船は今月3日、横浜港に帰港した。検査で10人の感染が判明し、政府は2週間、乗客の下船を許可しない方針を決めた。
世界保健機関は、下船させない決定は支持している。船には56カ国・地域の人々が乗っており、確認が不十分なまま下船させればウイルスが世界に拡散する恐れもあった。
留め置くからには、船内での感染防止に加え、検査の着実な実施と感染者の隔離が不可欠だった。だが実際には、この2週間で感染者は増え続けた。乗客・乗員3711人のうち、感染者は600人を超えた。
国立感染症研究所は、留め置きを始めるまでに乗客の間で、その後は乗員の間で感染が広がった可能性を示唆する。船内では感染判明後もイベントやバイキング形式の食事が提供されたという。ウイルス検査も発熱などがある人に限られた。想定の甘さがあったことは否めない。
現場を訪ねた専門家からは、船内での感染防止が不十分だったとの指摘が出ている。
加藤勝信厚生労働相や政府はこれに対し「管理は十分だった」と反論した。責任を問われることへの警戒も働いたのだろうが、検疫官や船内で業務した政府職員が感染している現状では「十分」とは言えまい。まずは船内で何が起きたかを客観的に記録し、教訓として残すべきだ。
米国や韓国は下船後も乗客を14日間隔離するが、日本の乗客は自由行動となり、戸惑う声が出ている。乗客の健康面の見守りと心のケアも今後の課題だ。
今回は多国籍の人々が乗り合わせるクルーズ船が新興感染症に直面した初のケースである。日本はクルーズ船をはじめ海外からの観光客を積極的に受け入れる政策を掲げる。
だが検査態勢は手薄で、感染リスクのある人々を一度に受け入れる施設の用意も十分ではない。元々の備えについても検証が欠かせない。