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令和のジャーナリズム同時代史

元社会部長の小川一が、ジャーナリズムをめぐる令和の事象について、平成や昭和の教訓を振り返りつつ、その課題を展望します。

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(7)巨大プラットホーム・ヤフーとメディア

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ヤフー本社が入る東京ガーデンテラス紀尾井町紀尾井タワー
ヤフー本社が入る東京ガーデンテラス紀尾井町紀尾井タワー

 ヤフージャパン(ヤフー)は、日本の中では群を抜く巨大なプラットフォームです。そして、その柱であるヤフーニュースは月間ページビュー(PV)数150億(2016年8月に過去最多を記録)という日本最大のニュースサイトです。1996年7月にサービスが始まりました。現在の配信パートナーは約350社、500媒体に上り、1日に記事約5000本の配信を受け、それを掲載しています。大まかな認識としては、日本経済新聞を除くほぼすべての大手の新聞、通信、放送、雑誌、ネットメディアのニュースを掲載しています。そして、新聞の1面トップよりも影響力があると指摘されているのが、トップページの最も目立つところに掲載される「ヤフートピックス」(ヤフトピ)です。ヤフーニュースでは8本が選ばれます。

 余談ですが、新聞業界の中でよく耳にするのは、「新聞の1面に署名記事が出ても知人や友人の反応はなかったのに、ヤフトピに載ると一斉にLINEやメールで反応が届いた」という若い記者たちの体験です。確かに、ヤフトピに入ると、その記事のPVは飛躍的に伸びました。その伸び方は今、以前ほどではなくなってはいます。私は非常勤講師を務める成城大学をはじめ、いくつかの大学の教壇に立つ機会がありますが、今の大学生の多くは「ヤフトピ」という言葉も知りません。その環境の変容については別の機会に改めて触れることにします。ただ、ネット配信する際、今も各メディアは、ヤフトピに入ることを狙い、採用されやすくなるよう速報態勢を強化し、記事の内容も工夫していることに変わりはありません。

 このヤフトピの選定にあたっているのが、約25人からなるトピックス編集部です。大手メディアの記者をはじめエンジニア、デザイナー、企画職、営業職、アナリストなど多職種の経験を持つ人材で構成されています。30歳代が中心で、中途採用者だけでなく新卒者も配属されているといいます。東京だけでなく福岡、大阪にも拠点を持ち、24時間365日態勢で稼働しています。

 2019年9月に高知市で開かれたマスコミ倫理懇談会全国協議会には、ヤフーの編集本部の苅田伸宏・編集1部長(肩書は当時)も招かれ、編集方針を説明しました。苅田氏は毎日新聞記者からヤフーに転職しました。01年に毎日新聞社に入り、盛岡支局、東京と大阪の社会部で公正取引委員会や裁判所を担当した敏腕の事件記者でした。13年10月に毎日新聞社を辞め、ヤフーに移りました。私が社会部長時代の直属の部下であり、私が編集編成局長の時に退社しました。毎日新聞としても絶対に失いたくない人材で、翻意するよう自ら説得にあたりました。

 苅田氏の説明によると、ヤフトピに掲載する記事の判断基軸は「公共性」と「社会的関心」だといいます。「公共性」は、災害、政治、経済などのジャンルに該当するもので、「たとえ読まれにくい内容であっても社会的に重要な…

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