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毎日新聞

マラソングランドチャンピオンシップでは3位だった大迫傑。「再戦」に意欲を燃やす=東京都港区で2019年9月15日、久保玲撮影

Passion

大迫傑「果報は寝て待たず」 日本記録保持者が「再戦」を選んだ胸の内 3月1日号砲・東京マラソン

 東京五輪男子マラソン代表選考会を兼ねた東京マラソンが3月1日、東京都庁から東京駅前に至るコースで行われる。厚底シューズ騒動や新型肺炎の影響による大会縮小などレース前から話題を呼ぶレースで、「3強」と評される選手たちは、それぞれの決意を胸に大一番に挑む。その一人、日本記録保持者の大迫傑(28)=ナイキ=が「再戦」を選択した胸の内とは? 【小林悠太】

大迫傑(28)=ナイキ

マラソングランドチャンピオンシップで力走する大迫傑(右)=東京都内で2019年9月15日午前10時48分(代表撮影)

 2019年9月に東京都内で行われた代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」では、代表切符に一歩届かず3位。「次点扱い」で難しい立場となり、レース直後には「待つなら待つで大変。出るなら出るで覚悟して臨まないといけない」と悩ましい心境を打ち明けた。

 五輪代表枠は3人で、MGCの1、2位が代表に決定。残る1枠は19年12月から今年3月までの国内3大会「MGCファイナルチャレンジ」(福岡国際、東京、びわ湖毎日)で、日本陸上競技連盟による設定記録「2時間5分49秒」をクリアした上で、最速の選手が選ばれる。

マラソン初優勝で「新たな自分を見つけたい」

 この設定記録は、自らの日本記録より1秒速いタイムだった。突破した選手がいない場合は、MGC3位の結果が重視され、五輪代表の座を手にすることができる。東京五輪への調整を見据え、ファイナルチャレンジに出場しない選択肢もあったが、あえて東京マラソン出場を決めた。

男子マラソンで日本記録を樹立し、1億円の報奨金贈呈式で記念のカップを受け取った大迫傑=東京都中央区で2019年3月7日、円谷美晶撮影

 約1カ月前、ネットの動画配信で出場を決めた理由について、こう説明した。「MGC3位という位置が(代表切符を獲得できるか)危ないというのはゼロではないが、大きな理由ではない。初めて勝利を得て、新しい自分を見つけたい」

 初マラソンだった17年4月のボストンや日本記録を出した18年10月のシカゴなど調整目的で出場したホノルル(19年12月、6位)をのぞき、完走した4レースはすべて3位。「MGCは100%勝てると思った中での3位で悔しかった。次に進むための大きなモチベーションが勝つことだった」。「マラソン初優勝」を目標に掲げることで自らを鼓舞し、走る意義を見いだした。

 前日本記録保持者の設楽悠太(Honda)や18年アジア大会金メダリストの井上大仁(MHPS)らとの「3強」対決が注目されるが、「内(自分)に目線を向けて、どう戦うかが重要」と淡々した口ぶり。五輪代表を懸けたラストチャンスにも、これまで通り100%の力を出し切ることに意識を傾ける。

日本選手権男子1万メートルで優勝し、拳を握り締める大迫傑=大阪・ヤンマースタジアム長居で2017年6月23日、山崎一輝撮影

陸上界屈指の「発信力」

 普段はツイッターや公式アプリを通じ、トレーニング方法などを積極的に投稿している。日本選手権1万メートル出場を断られたことをきっかけに「参加資格が不透明」と日本陸上競技連盟を批判したり、正月の箱根駅伝で捻挫しても走り続ける選手を盛り上げるような実況に苦言を呈したりするなど、歯に衣(きぬ)着せぬコメントが注目を集め、ツイッターのフォロワー数は14万超。陸上界屈指の「発信力」を持つ。競技では実業団中心の国内の陸上界では異例のプロランナーとして、米国を拠点に活動している。

 東京五輪後の来年3月には、選手主導で記録に挑戦する大会を創設するプランもある。世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が非公認レースで史上初の「2時間切り」を達成したことに触れ、「同じことをしないとアフリカ系の選手たちに置いていかれる。選手たちの意識を変えることで、差を縮めていける」と意欲を燃やす。

 マラソン界全体を見渡す大きな視点を持ち、常に走り続ける日本記録保持者にとって、東京マラソン優勝は新たな次元に到達するためのステップに過ぎない。

大迫傑(おおさこ・すぐる)

 東京都出身。長野・佐久長聖高、早稲田大を経て、実業団の日清食品グループに入ったが、1年で退社してプロランナーに転向。米国を拠点に練習を続ける。初マラソンとなった2017年4月のボストンで3位に入ると、18年10月のシカゴで2時間5分50秒の日本記録をマークした。16年リオデジャネイロ五輪は5000㍍と1万㍍に出場。3000㍍と5000㍍の日本記録も持つ。

東京五輪男子マラソンの代表選考状況

 2019年9月の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で、1位の中村匠吾(富士通)、2位の服部勇馬(トヨタ自動車)が決定。残り1枠は「ファイナルチャレンジ」に指定された東京マラソンなど3大会で、日本陸上競技連盟による設定記録(2時間5分49秒)をクリアした上で、最速の選手が選ばれる。

 設定記録は、MGCの出場資格を懸けた17年8月から19年4月までのレースで日本選手最速となった大迫傑(ナイキ)の日本記録(18年10月、シカゴ)より1秒速いタイム。クリアした選手が出なければ、MGC3位の大迫が代表となる。大迫、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)らMGCの出場権を得た34人のうち、18人が東京マラソンにエントリーした。

小林悠太

毎日新聞東京本社運動部。1983年、埼玉県生まれ。2006年入社。甲府支局、西部運動課を経て、16年から東京本社運動部。リオデジャネイロ五輪を現地取材した。バドミントン、陸上、バレーボールなどを担当。学生時代、184センチの身長を生かそうとバレーに熱中。幼稚園児の長男、次男とバレーのパスをするのが目下の夢。