塩野七生さんと初めて会ったのは、若い頃に超党派の議員団でローマに行った時だった。先輩に連れられて聞いた塩野さんの話が面白く、帰国してすぐに「ローマ人の物語」を買い、その後も毎年、続刊が出たら買っていた。
数ある塩野作品の中からこの本を選んだのは、フリードリヒ2世の「時代の先駆者」ぶりが突出しているからだ。ローマ教皇の力が強かった13世紀前半に、彼は「宗教」と「世俗」の分離を目指した。ルネサンス以降に実現する社会像や価値観を、その200~300年前に模索して前進させた。宗教のローマ教皇、世俗の神聖ローマ皇帝という分担を、少なくとも彼が生きている間は実現した。
塩野さんが力を入れて書く人物は「リアリスト」(現実を見据える人物)であることが共通している。フリードリヒ2世は中世封建制が強かった時代に、足元の南イタリアで中央集権的な統治を実現する一方、皇帝として君臨したドイツでは封建領主の存在を容認することでドイツ統一をいったん成し遂げた。力関係を分析する柔軟性がある。
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