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毎日新聞

男子マラソンで金メダルを獲得し、笑顔を見せる井上大仁=インドネシア・ジャカルタのブンカルノ競技場で2018年8月25日、徳野仁子撮影

Passion

井上大仁 「厚底効果」で起死回生の日本新へ 3月1日号砲・東京マラソン

 東京オリンピック男子マラソン代表選考会を兼ねた東京マラソンが3月1日、東京都庁から東京駅前に至るコースで行われる。厚底シューズ騒動や新型肺炎の影響による大会縮小などレース前から話題を呼ぶレースで、「3強」と評される選手たちは、それぞれの決意を胸に大一番に挑む。昨年の選考会は「最下位」だった井上大仁(27)=MHPS=は、強力な「相棒」とともに雪辱を期す。【新井隆一、野村和史】

井上大仁(27)=MHPS

MGCでは完走した選手で最下位の27位と悔しさを味わった井上大仁。ラストチャンスとなる東京マラソンで雪辱を期す=東京都港区で2019年9月15日、宮間俊樹撮影

 誰もが想像すらしない姿だった。昨年9月の東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」。服部勇馬(トヨタ自動車)、大迫傑(ナイキ)、設楽悠太(Honda)と並んで「4強」と目された男は、トップから10分以上も遅れてフィニッシュした。完走した27人のうち、最下位だった。

 2018年夏のジャカルタ・アジア大会で男子マラソン金メダルに輝き、酷暑への強さは実証済みだった。「なぜだか分からない」。レース後、ぼうぜんとした顔で絞り出した言葉がショックの大きさを物語っていた。

 あれから半年近くになり、MGCは好不調の波の一つと考え、「そんなに重く受け止める必要もない」と気持ちを切り替えたという。一方で、国内外の長距離界を席巻するナイキの厚底シューズを昨年末から使い始めた。

全日本実業団対抗駅伝ではエース区間の4区で、圧巻の区間新記録をマークした井上大仁(左)。ピンク色の厚底シューズを履いていた=群馬県太田市で2020年1月1日、喜屋武真之介撮影

「厚底」がフィット MGC「最下位」から雪辱へ

 本人は「しっかり自分に合った靴を、結果を出すために選んでいくだけ」と多くを語らないが、結果は着実についてきた。元日の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)では各チームのエースが集まる最長区間の4区(22・4キロ)で設楽の記録を塗り替える区間新記録をマーク。復調を印象づけた。指導するMHPSの黒木純監督も「力感なく前に進んでいる。足の張りもなくなってきた」と「厚底効果」を認めた。

 東京五輪代表は既に2人が決定。残り1枠を巡っては、日本陸上競技連盟による設定記録(2時間5分49秒)の突破が条件となる。国内の陸上関係者の間では、厚底シューズを履くことで「マラソンでは記録が2分向上する」との見方が広がっている。井上の自己ベストは2年前の東京マラソンで出した日本歴代5位の2時間6分54秒。単純計算すれば、大迫の日本記録(2時間5分50秒)より1秒速い設定記録を大幅に上回ることになる。

 もちろん、日本記録を狙える位置にいるのは、井上に地力があるからだ。「(東京マラソンは)日本記録を目標に、それ以上のレベルを発揮して優勝争いに絡んでいければ」。東京の先に世界への挑戦権がある。

井上大仁(いのうえ・ひろと)

 長崎県出身。長崎・鎮西学院高、山梨学院大を経て、地元・長崎に拠点を置く実業団のMHPSに入社。2回目のマラソンだった17年東京マラソンで2時間8分22秒をマークした。同年の世界選手権ロンドン大会に出場して26位。18年は東京マラソンで2時間6分54秒の好記録を出し、高温多湿のジャカルタ・アジア大会では日本勢32年ぶりの金メダルを獲得した。

東京五輪男子マラソンの代表選考状況

 2019年9月の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で、1位の中村匠吾(富士通)、2位の服部勇馬(トヨタ自動車)が決定。残り1枠は「ファイナルチャレンジ」に指定された東京マラソンなど3大会で、日本陸上競技連盟による設定記録(2時間5分49秒)をクリアした上で、最速の選手が選ばれる。

 設定記録は、MGCの出場資格を懸けた17年8月から19年4月までのレースで日本選手最速となった大迫傑(ナイキ)の日本記録(18年10月、シカゴ)より1秒速いタイム。クリアした選手が出なければ、MGC3位の大迫が代表となる。大迫、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)らMGCの出場権を得た34人のうち、18人が東京マラソンにエントリーした。

新井隆一

毎日新聞大阪本社運動部。1977年、東京都生まれ。2001年入社。大阪運動部、松山支局、姫路支局相生通信部を経て、07年秋から大阪、東京運動部で勤務。リオデジャネイロ五輪、陸上世界選手権(モスクワ、北京、ロンドン)、ラグビーワールドカップ(W杯)ニュージーランド大会などを取材。高校野球の監督経験もある。