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木村 衣有子・評『餃子のおんがえし』じろまるいずみ・著

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食べ物の「普通」は人の数だけあるものだ

◆『餃子のおんがえし』じろまるいずみ・著(晶文社/税別1500円)

 「イケアの炊き込みごはん」のレシピから、婚家のたくわん話まで幅広く、平明な筆致の食エッセー集。

 じろまるいずみさんは長崎生まれ。千葉は南房総にて育ち、18歳で上京、25歳で結婚し大阪に住み、やがてのお別れのち名古屋で居酒屋を営み、今は再び東京に暮らすという。その来し方の豊かさが刻印されているのは「だしまきのレシピ」と題された一篇。実家の卵焼きはしょっぱい系で、よそで出くわす、関東ならではの甘い卵焼きを受け入れられずにいたというじろまるさんが、結婚を機に「卵が力いっぱいだしを抱え込み、ふわふわのたぷんたぷん」な関西のだしまきを知り、虜(とりこ)となる。営んでいた居酒屋の人気の一品も、だしまきだったそうだ。

 「普通」がキーワードとなる作が、何篇かある。表題作、それから「ひみつの味噌汁」「お弁当十人十色」など。食の「普通」とはなんだろうというところにぐっと迫る。とりわけ味噌汁については頷(うなず)けるくだりが数多(あまた)ある。「うちの当たり前は、よその非常識。味噌汁だけの話ではないけれど」というのはほんとうだ。味のスタンダードはひとつではなく、人それぞれにある。それはいろいろな土地を渡り歩いたじろま…

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