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社説

原爆症の最高裁判決 救済の道狭めない対応を

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 原爆症の認定を巡り、被爆者3人の敗訴が最高裁で確定した。

 認定には、原爆の放射線が病気の原因である「放射線起因性」と、現に医療が必要な「要医療性」が認められなければならない。

 3人は慢性甲状腺炎や白内障と診断され、経過観察中だった。訴訟では、こうした状態が要医療性に当たるかどうかが争われた。

 最高裁判決は、経過観察にこれが認められる条件として「積極的な治療の一環と言えるような特別な事情があること」との初判断を示した。その上で3人には、この条件が当てはまらないと結論づけた。

 要医療性について、国の審査方針は「疾病等の状況に基づき、個別に判断する」としか記していない。今回の判決は、審査の厳格化を求めるものと言える。原爆症認定のハードルが高くなる懸念がある。

 爆心地から一定の範囲にいた人などには被爆者健康手帳が交付され、医療費の自己負担がなくなる。原爆症と認定されれば、さらに月約14万円の医療特別手当が支給される。

 だが、国は認定手続きを限定的、画一的に運用してきた。それを拡大したのは被爆者が起こした訴訟だ。放射線起因性を広く認める判決を相次いで勝ち取り、それに促される形で国は審査方針を緩和した。

 それでも昨年3月末時点で被爆者手帳保持者14万5844人のうち、原爆症と認定された人は5%の7269人に過ぎない。2審の被爆者勝訴を覆した今回の判決は、従来の司法判断から後退している。

 広島・長崎に投下された原爆の被害実態は占領期に封印され、その後も国は積極的な掘り起こしに及び腰だった。被爆者救済が不十分な中、偏見や差別を避けるために被爆体験を隠した人も少なくない。

 今回の判決は「特別な事情」に関し、病気の悪化や再発の可能性などを医学的見地から個別に考慮すべきだとの考え方も示した。補足意見では、経過観察中でも原爆症と認定される余地に言及した。

 原爆の放射線被害は今後、解明が進む可能性もある。被爆者の平均年齢は82・65歳になっており、救済は時間との闘いでもある。国には、被爆者救済の道を狭めないような対応が求められる。

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