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つながり紡いで

フィリピン出身中高年の居場所 共に年重ね、老後考える=山野上隆史 /大阪

ヤングハーツが開いたクリスマス会の様子

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 「地震や台風など災害が増え、不安なことが増えた。それに、これまで将来のことはあまり考えられなかったけど、子どもが自立し、人生のラストステージについて考えるようになった。先が見えた時に怖くなった」

 平松マリアさんはフィリピン出身。1992年に来日した。来日当初は寂しさで毎日フィリピンの家族に電話を掛けた。日本で出産、子育てを経験し、今は「とよなか国際交流センター」(豊中市)の多言語スタッフなどとして活躍する。

 いつしかフィリピンよりも日本の生活の方が長くなり、食事も日本の食べ物の方が合うようになった。子どもたちは大きくなり、それぞれ子育て中。「子や孫は日本で生まれ育ったので、これからも日本で生きていくと思う。だから私も、ずっと日本で暮らすと思います」

 80年代後半から日本ではアジアや南米からやってくる外国人労働者が増えた。フィリピンからは興行ビザで来日し、その後も日本で暮らし続ける人も多い。みんな年を重ね、50~60代の仲間が増えた。子どもが自立し、さらに離婚や配偶者が病気で亡くなるなど一人暮らしの人も増えた。老後の生活や健康など、これまでとはちがう心配事が出てきた。

 だれも孤立しないように、ライフステージに合わせた居場所として、とよなか国際交流協会がマリアさんたちと2017年に始めたのが「Filipino Young At Heart′s Club」(以下ヤングアットハーツ)だ。月1回、豊中市周辺に暮らす40歳以上のフィリピン人が集まり、自分たちでセミナーやイベントを企画する。

 日本に長く住んでいたら、問題がなくなるわけではない。長く暮らしていても日本語はやはり難しい。子どもの結婚式や親戚のお葬式など、冠婚葬祭で戸惑うことも多い。最近はお墓について、値段やどうやって申し込むのかといったことも話題に上る。

 そこで年金や健康など、気になるテーマについて、専門家を呼んでセミナーを開いたり、フィリピンでも流行しているダンス「ズンバ」で体を動かしたりする。日本での生活が長くなり、今さら「知らない」と言いにくいことも、仲間とわいわい過ごす活動の中では気軽に相談できることがある。

 活動はセミナーだけではない。「人生のラストステージはみんなで集まって、楽しく過ごしたい」。ピノイフェスタ(フィリピンの花祭り)やクリスマスパーティーといった楽しい企画も行う。そういった企画には子や孫たちも来てくれる。

 マリアさんは言う。「おばあちゃんになった私たちがどういう人かなんて話は普段しない。伝えたいと思うけど、なかなか伝わらない。でも、ヤングアットハーツのイベントに来てもらうことで伝わるものがある。子や孫にはアイデンティティーを隠さないでどうやって生きていくか、そのことを伝えていきたい」

 昨今の外国人の受け入れ政策では、もっぱら「労働者」として若い世代がクローズアップされる。しかし、多文化共生社会を目指すということは「今、ここ」だけの話で終わらない。外国人を「人」として受け入れるということは、共に年を重ね、共に世代を重ねていくということでもある。隣人として共に生きていくという意識が必要だ。


 地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は3月20日掲載予定。


 ■人物略歴

山野上隆史(やまのうえ・たかし)さん

 公益財団法人とよなか国際交流協会理事兼事務局長。1977年、大阪生まれ、神戸育ち。高校生の時、阪神大震災を経験。主な共著に「外国人と共生する地域づくり 大阪・豊中の実践から見えてきたもの」(明石書店)。

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