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突然の天災は、家族や親しい人たちを何の予告もなく引き裂く。東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市には、遺族らが津波で亡くなった人たちに向けて書いた手紙を預かる「漂流ポスト3・11」が置かれている▲メッセージを受け取ることで遺族に寄り添おうと、県内に住む赤川勇治さん(70)が震災3年後の2014年に設けた。最近は震災に限らず、死別した人にあてた便りが全国から届くようになった。だが「地元にはまだ、つらくて手紙を書く気になれない人が少なくない」と赤川さんは語る▲東北放送が昨年制作したドラマ「小さな神たちの祭り」も、遺族らが犠牲者に寄せる思いがテーマだ。内館牧子さんが脚本を書いた。主人公の宮城県亘理町に住む青年は所用で上京した日、津波で家族5人を失う。気丈を装うが、一人だけ生き残ったことへの葛藤を抱き続ける▲後半、ドラマは不思議で思わぬ展開をたどり、青年は冥界の家族らと再会し、思いを語り合う。「伝えたい」気持ちは犠牲になった人たちもまた同じだったろうと、感じさせるシーンだ▲ドラマは各地で順次放送され、きょう午後、BS-TBSで全国放送される。内館さんは「震災を風化させちゃいけないと、方法をかなり考えました」と作品への思いを語っている▲劇中、震災前のような輝きを取り戻していく東京や仙台の街並みに、主人公が憤る場面がある。被災から9年を経て、今なお時計の針が止まったままの被災者と、社会の距離が広がってはいないか。