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昨日読んだ文庫=水島朝穂

 「ウルトラマンティガ」や刑事ドラマ「相棒」の脚本で知られる太田愛の長編小説『天上の葦(あし)』(角川文庫)を3年前に単行本で読んだ。2019年11月に角川文庫になったので、先日、乗客の大半がスマホの画面をみつめている通勤電車のなかで再読した。

 東京・渋谷駅前のスクランブル交差点における衆人環視のなかでの96歳の老人の不審死。冒頭からの息を抜けない展開に再び引き込まれた。個性あふれる主人公たちが織りなす極上のクライムサスペンスの世界に、過去の「歴史」の伏線がしっかり組み込まれ、しだいにその不気味な姿をあらわしてくる。

 「戦争は常に、すでに始まったもの、すでに起こってしまったこととして知らされる。どんな国の政府も、国民に戦争を始めてもいいですかとは尋ねない」。非常時に向かう社会が、既成事実の静かな積み重ねのなかで、あるいは徐々に、あるいは急速に人々の言論空間を狭め、息苦しくさせていく。公文書の捏造(ねつぞう)、改ざん、隠蔽(いんぺい)。情報の操作で人々の気分まで巧みに操縦する。政治家も官僚も警察も、ついには検察…

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