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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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それは大阪の千里ニュータウンのスーパーで始まった…

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 それは大阪の千里ニュータウンのスーパーで始まった。当今、こう聞いてピンとくるのは1973年の石油ショックを知る世代の方だろう。今は歴史となったトイレットぺーパーの買いだめ騒動の発端である▲安売りで売り切れたトイレットペーパーの補充にスーパーが倍の値段の高級品を出したところ、紙の価格高騰が始まったと思った客が列をなした。騒ぎは広がり、小紙は翌々日に兵庫で起こった混乱による高齢者の負傷を伝えている▲当時、政府が紙の節約を求めていたのが原因の一つとされるが、ことトイレットペーパーの在庫は十分だったという。背景には諸物価急騰のほか、水洗トイレの普及など庶民生活の大変化による不安定な心理があったとの指摘もある▲時代変わって、こちらのトイレットペーパー騒動はソーシャルメディアで広がった品薄になるとのデマが発端だった。新型コロナウイルスの感染拡大で起きた香港やシンガポールのトイレットペーパー買いだめの影響もあったようだ▲「予言の自己実現」とはある事が起こりそうだと人々が思って行動することで、そう思わなければ起こらぬ事が実現する次第をいう。品薄予想がデマと知る人も、デマの自己実現に備えて品薄を加速する行列に加わるから始末に困る▲首相の一斉休校要請は、米やカップめん、レトルト食品など、家での食事のための買いだめももたらしたが、どれも供給体制に不安はない。あしき予言の実現に手を貸さない冷静さを過去の経験に学びたい。

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