
昨秋刊行された1冊のノンフィクション本が、マスコミ関係者の耳目を集めている。元編集者の下山進・慶大特別招聘(しょうへい)教授が著した「2050年のメディア」(文芸春秋)である。インターネットの出現によって<あらゆる産業が変革を余儀なくされた。新聞もそのひとつであった>という刺激的な書き出しで始まる同書は、紙面からネット空間へと情報発信の場に変化の波が押し寄せた20年余りのメディアの苦闘を描いている。
多くの紙数が割かれているのは日本の新聞より10年早く危機を迎えた米ニューヨーク・タイムズの「Newspaper is dead!(もう新聞は死んでいる)」という衝撃リポートのてんまつであり、世界最大の発行部数を誇る「紙の王国」読売新聞と、いち早く電子新聞の有料課金制度を成功させた日本経済新聞、そしてネットニュースを核に巨大プラットフォームに成長したヤフー・ジャパンの3社の軌跡である。
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