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地球の肺を守ろう~コンゴ熱帯雨林保護の最前線から(11)オフロード続きの陸路視察行=大仲幸作

サバンナの中をどこまでも真っすぐな道が果てしなく続く(キンシャサ~キクイット間)=2020年1月(大仲幸作さん提供)

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 116万ヘクタール……これはコンゴ民主共和国で1年間に減少した森林の面積です。米国メリーランド大学の研究チームの最新の研究成果によると、コンゴ民主共和国はブラジル、インドネシアに次いで世界で3番目に森林減少が進んでいる国とのこと。驚くことに「地球の肺」から秋田県に匹敵する面積の森林が年々消失しているのです。

しかし、キンシャサの執務室で報告書を読んだり、会議に出席して発表を聞いたりしているだけでは、その深刻さを実感することはできません。「事件は会議室ではなく現場で起きているんだ!」と刑事が叫ぶ有名なドラマがありましたが、まさにその通りです。

現在、コンゴ盆地の森林では一体どういったことが起こっているのか?。今回、私はそのことを、この目で実際に確かめるために、急速に森林が減少している地域を視察することを決断しました。

 「決断」なんて大げさな……と思われた方もいるでしょう。しかし、そう書いたことには理由があります。

 コンゴは国連の人間開発指数で最下位になったこともある世界で最も開発が遅れた貧困国です。しかも、その広大な国土(日本の約6倍)の約7割が森林に覆われ、アフリカ第二の大河であるコンゴ川とその支流が網の目のように流れています。

 さらには反政府勢力との対立、エボラを始めとした感染症の流行など、たとえ専門家といえども、「さあ来週は森でも見てくるか!」などと気軽に言えない状況なのです。

降りしきる雨の中、ぬかるみにハマった同僚の車を必死で押してくれる村人たち=2020年1月(大仲幸作さん提供)

 このため、赴任して1年以上も経つというのに、今回が初めての陸路による本格的な出張となりました。目的地はキンシャサから約750キロ(東京~青森程度)離れたクイル州のイディオファという地域。2台の4WDで車列を組み、衛星携帯を携行するなど安全対策にも万全を期しての旅路です。

 しかし、その困難さ、特にコンゴ民主共和国の道路インフラのひどさは、私の想像をはるかに超えるものでした。

 出張2日目、私たち2台の車は、幹線道路をいきなり左折し、オフロードに突入しました。何気なく始まったその悪路は目的地であるイディオファに到着するまで、延々と100キロ、時間にして5時間以上も続いたのです。

 道中、日本では見たこともないような真っ黒な雨雲が空一面を覆い始めたかと思うと、突然激しい雨が降り始めました。そして、まだ正午過ぎだというのに、ライトを点灯しながらの走行を余儀なくされました。

 車がぬかるみにハマった際、どこからともなく現れた村人や通行人が、その引き上げを手伝ってくれました。ハマっては引き上げ、ハマっては引き上げを繰り返すうちに、村人数人を専属の救助隊よろしく、後ろの荷台に乗せながらの走行となってしまいました。

 激しい雨が降りしきる中、びしょ濡れになりながら荷台で揺れる彼らを見て、「おいおい大丈夫か?」と心配そうな顔をする私に、同僚は「大丈夫、これは彼らの仕事の一つだ、心配するな!」と笑顔で答えました。

道路と呼ぶこともはばかられるレベルの悪路。地域発展における道路の大切さを実感する(キクイット~イディオファ間)=2020年1月(大仲幸作さん提供)

 携帯GPSでは、私たちの現在地を示す青い点が、道路表示のない薄緑の部分をゆっくりと東に向かって動いていました。目的地イディオファまでは、まだまだ先が長そうでした。

 「ここで引き返すべきか」私は何度そう考えたことでしょう。

 しかし、専門家が森も見られずに戻ってきたとあっては冗談にもなりません。電気も水道もない、ないない尽くしの沿道の村々から、まんべんの笑顔で私たちの車に向かって手を振ってくれる子供たちに励まされ、私は旅の続行を決意しました。

 やがて、はるか丘の向こうにポツポツと建物らしきものが見えてきました。そして、日が沈み始めた頃、私たち一行は何とかイディオファの町に滑り込むことができました。(つづく)


大仲幸作(おおなか・こうさく)1999年に農林水産省入省。北海道森林管理局、在ケニア日本大使館、農水省国際経済課、マラウイ共和国環境省、林野庁海外林業協力室などを経て、2018年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザー(JICA専門家)としてコンゴ民主共和国環境省に勤務。

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