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あしたに、ちゃれんじ

関西各地で芽生えている市民の新しい活動を紹介します。

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店舗の垣根越え「平野宮町みんな食堂」 地域住民の孤食防ぐ=中川悠 /大阪

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食堂の前で笑顔を見せるイズミヤの成次さん(中央)、商店会の板橋さん(左から2番目)ら 拡大
食堂の前で笑顔を見せるイズミヤの成次さん(中央)、商店会の板橋さん(左から2番目)ら

 「この食堂、私たちも入っていいんかな?」「家の中に余っている食器があったから寄付するわ!」。大阪市平野区の大型ショッピングセンターの一角に2月5日にオープンした地域食堂「平野宮町みんな食堂」から、今日も明るい笑い声が聞こえてくる。

 JR平野駅前に建つメガロコープ1~5号棟は、高度成長期の1970年初頭に作られた1000戸もの巨大な分譲マンションだ。1号棟の1階フロアにはスーパーマーケットなどが入る「イズミヤ平野店」がある。さらに棟の周囲には喫茶店やスポーツ用品店、すし屋などが軒を連ね、商店会を作っている。

 最盛期には数千人が暮らし、イズミヤを中心として有名タレントを招いたイベントや餅つき大会なども開かれていたという。あれから50年。住民は年を重ね、高齢の夫婦や独居の人が増え、商店会の店舗にはクリニックや福祉施設が増えている。

 食堂は毎週水~金曜の3日間、正午~午後3時に限ったオープンながら、近隣住民が1日20人以上訪れる。「私も時間見つけて手伝わせて」「80代の友達と今度食べにくるわ」。新しい集いの場所に反応もいい。栄養バランスを考えて作られたメニューは日替わりで、1食350円。

 この食堂が珍しいのは、地域の商店街である「メガロタウン5番街商店会」などが、大規模小売店舗のイズミヤ平野店とタッグを組んだことだ。小さな商圏で商店街と大型店は時にライバルであり、時に共存関係にある。しかし、双方の耳に届いてくるのは顧客である住民の生活の困りごと。地域の10年後を見据えると、高齢化は深刻化し、それぞれのお店の売り上げも落ちていくのは容易に想像できる。

 地域の力を合わせて、住民の孤食を防ぎ、生活の困りごとを支援したい。さらには家から外に出るきっかけをつくりたい。商店会を中心に定期的なミーティングを重ねた。その中で生まれたのが、イズミヤ平野店の空き店舗を活用した地域食堂プラン。大阪府の商店街サポーター創出・活動支援事業にも採択され、加速度的に具体化した。

 2月2日のお披露目イベントは住民約50人が訪れる盛況だった。食堂ではスタッフとして障がいのある人が働くほか、子ども食堂を運営する地域団体「子どもの居場所を考える会 ka・ta・ri」のメンバーもボランティアで参加する。

 「商店会とイズミヤが一緒になって地域のためにつくった場所。高齢者にはとてもありがたい存在」と話すのは、メガロタウン5番街商店会の会長、板橋令幸(のりゆき)さん(80)と監事の丸谷常夫さん(75)。イズミヤ平野店の店長、成次孝子さん(51)も「空いていた店舗がお客様の笑顔をつくる場所になるのは、とてもうれしい」と話す。

 オープンから1カ月。夕方に訪れた小学生から「宿題をしてもいい?」と聞かれ、子育て世代から「土日はオープンしないの?」と尋ねられることも。今後は商店会の店主らを先生役に料理教室などを行う「まちゼミ」や、子ども向けに店員体験や音楽イベントも予定しているという。

 商店街と大型店が垣根を越え、多世代の笑顔を生み出すためにまいた種は、どんな花を咲かせてくれるのか。<次回は4月10日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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