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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2時間5分29秒の日本新記録で4位となった大迫傑=東京都千代田区で2020年3月1日(代表撮影)

Field of View

東京マラソン好記録続出 背景を数字で読み解く

 3月1日の東京マラソン男子は、19人の日本選手が2時間10分以内で走った。一度にこれほど多くの「サブテン」の選手が出たことは、強豪国のケニアやエチオピアでも例がない。大迫傑(ナイキ)が2時間5分29秒の日本新記録で4位に入り注目を集めたが、高久龍(ヤクルト、8位・2時間6分45秒)、上門大祐(大塚製薬、9位・2時間6分54秒)、定方俊樹(MHPS、10位・2時間7分5秒)も新たに日本歴代10傑の中に入った。【石井朗生】

サブテン全員が自己記録時より中間点を速く通過

一斉にスタートする選手たち=東京都新宿区で2020年3月1日、宮間俊樹撮影

 初マラソンを除く18人の選手のペースを従来の自己ベスト記録達成時(以下「自己記録時」)と比較すると、好記録が続出したポイントやレースの傾向も分かる。18人全員が、中間点(21・0975キロ地点)を自己記録時より大幅に速いタイムで通過。多くの日本選手が前半から「攻めの走り」をしていた。

 大迫と井上大仁(MHPS、26位・2時間9分34秒)が加わった先頭集団は5キロを14分40秒を目安にしたペースで進み、中間点のタイムは1時間2分0秒程度だった。第2集団は5キロを14分50秒の設定で進み、中間点を1時間2分20秒程度で通過。中間点の通過が自己記録時より2分以上速かった選手は5人で、木村慎(Honda、11位・2時間7分20秒)は自己記録時を4分4秒も上回った。

 ただ、今回の東京は、全体的に後半のペースダウンが大きかった。前半での果敢なチャレンジの負担が後半に影響したとみられる。大迫も従来の日本記録の時は前半より後半の方が18秒速かったが、今回は後半の方が1分29秒遅かった。

高速レースが日本男子の基準になるか

30キロ過ぎを走る高久龍(中央)ら=東京都千代田区で2020年3月1日、宮間俊樹撮影

 最近は、ナイキが開発した厚底で高機能のシューズが選手の快走を後押ししている。男子長距離の指導者らに厚底シューズを履いた時の効果について聞くと、従来のシューズと比べて「1キロで2~3秒速い」「5キロで15秒、ハーフマラソンで1分くらい違う」と見立てる声が多い。

 今回の第2集団の中間点通過タイムは、指導者らの推測を基に1分加算して考えると、従来のシューズを履いて1時間3分20秒で通過するのと同等になる。これは1キロ3分0秒、5キロあたりでは15分0秒程度で、長らく日本男子のトップ選手が世界で戦うために必要な「条件」として掲げられてきた水準。国内主要マラソンの設定ペースとしても一般的だった。それと同じ努力感で走れるのであれば、今回の東京で展開されたペースも決して無理なものではなかったと言える。

 東京オリンピックマラソン代表の選考方式「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の導入で目指すべき基準や目標が明確になったことや、全体的な記録アップに刺激されたことで、選手の練習内容や意識も向上しているという。メーカー各社による高機能なシューズの開発も進んでいる。今回の東京のようなペース設定が今後は当たり前となり、記録の評価の水準もこれまでと大きく変わることも予想される。

石井朗生

毎日新聞東京本社運動部編集委員。1967年生まれ、東京都出身。92年入社。陸上、アマ野球などを担当し、夏冬計6大会の五輪を取材。デスク業務を経て2018年秋に現場取材に復帰した。大学で陸上の十種競技に挑み、今も大会運営や審判に携わる。最近はアキレス腱(けん)断裂や腰椎(ようつい)すべり症など、ケガの経験が歴戦のトップ選手並みに。