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第103回全国高校野球選手権

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身体障害者野球チーム選手・倉敷商OB 浅野僚也さん(24) 「一へのこだわり」大事に /岡山

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身体障害者野球チーム「岡山桃太郎」でプレーする浅野僚也さん=松室花実撮影 拡大
身体障害者野球チーム「岡山桃太郎」でプレーする浅野僚也さん=松室花実撮影

 <センバツ2020>

野球への思い諦めず

 第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)に出場する倉敷商の選手たちに、特別な思いを寄せる人がいる。倉敷商卒業後に交通事故で右腕に障害を負い、現在は身体障害者軟式野球チーム「岡山桃太郎」でプレーするOBの浅野僚也(ともや)さん(24)。新型コロナウイルス感染拡大を受けて大会は無観客を前提に準備が進むため応援には駆けつけられないが、「体調に気をつけ、甲子園で校歌を歌っているところを見せてほしい」と、後輩たちにセンバツ初勝利の夢を託す。

 高校時代は投手。1年秋からベンチ入りし、中国大会などで活躍した。2012年春のセンバツではメンバーを外れたものの、夏にはベンチ入りして甲子園8強入り。最速139キロを誇る右腕として、3年春には背番号1を背負った。

 転機は卒業後、就職活動をしていた20歳の時。企業から内定をもらった帰り道に友人が運転する車で事故に遭った。目が覚めたら病院のベッドで、右腕の感覚がなくなっていた。そこから2年間は入院やリハビリを繰り返す日々。「もう野球ができない」と、一度は諦めた。だが、治療が落ち着くと、「やっぱりもう一度野球がやりたい」と、蓋(ふた)をしていた思いがあふれ出してきた。インターネットで障害者野球について調べて県内で活動する「岡山桃太郎」を知り、練習を見学することにした。

 それまでは「自分が一番不幸だ」と思っていた。だが、そこでは生まれつき手が不自由な人や、自力では歩けない人が楽しそうにプレーしていた。その姿を見て、「右手が使えなくても、使えないなりに頑張ってみよう」と決意。チームに入ってすぐ、障害者野球の全国大会に出場し、決勝でヒットを打つと、ベンチでチームメートが大喜びし、「入って良かった」と心から思った。

 野球の楽しさも改めて実感した。打撃練習を繰り返してホームランを打てるようになったとき、小学生の頃、初めて遠くまでボールを投げられるようになった時のことを思い出した。「できないことができるようになる感覚が、あの頃と同じようにうれしかった」

 浅野さんは昨秋から新たな挑戦を始めた。チームに入ってから外野手としてプレーしていたが、「自分はこれまでずっと投手。もう一度投げてみたい」と、今は左投げの習得に取り組んでいる。これまでとは体の使い方が正反対で道のりは険しいが、高校時代、プレッシャーなどで思うように体が動かなくなる「イップス」を克服するなど苦難を乗り越えた経験を思い出し、「あのとき頑張れたから、もう一度頑張ろう」と、必死で投げ込みを続けている。

 今年のセンバツ出場は自分のことのようにうれしかった。後輩たちには自らが高校時代に教わった「一へのこだわり」を大事にしてほしいといい、「初戦、初回が大事。先制点を一生懸命取りに行ってほしい」とエールを送る。【松室花実】

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