連載

社説

社説は日々、論説委員が議論を交わして練り上げます。出来事のふり返りにも活用してください。

連載一覧

社説

NHK番組への批判 経営委員長の資格あるか

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

 公共放送の自主自律、公正を揺るがしかねない事態だ。

 かんぽ生命保険の不正販売を追及したNHKの番組を、経営委員会の森下俊三委員長が委員長代行当時に批判していた。

 森下氏は当初、否定していたが、衆院総務委員会で発言を認めた。

 毎日新聞の取材によると森下氏は、抗議をしてきた日本郵政グループに同調するかのように「番組の作り方に問題があった」などと当時の上田良一会長を前に指摘していた。

 番組を巡っては、経営委が上田氏を厳重注意した。番組編集権に関するNHK内の「ガバナンス(統治)体制の強化」などが名目だった。森下氏と当時の委員長だった石原進氏が主導した措置だった。

 放送法は、NHKの最高意思決定機関である経営委が、個別の番組に介入することを禁じている。

 経営委はこれまで、番組への介入はなかったと説明してきた。上田氏も圧力を否定していた。

 森下氏は番組批判の発言について、「いろいろと自由な意見交換をする中での言葉だった」「具体的な制作手法について指示したものではない」と答弁した。

 だが、編集のトップであった上田氏が同席していたことを考えれば、番組への事実上の介入にあたり、放送法に抵触する恐れがある。

 経営委は会長の任免権を持ち、委員長はそのトップにあたる。NHKの自主自律への理解が十分とは思えない。これでは、森下氏の経営委員長としての適格性に疑問を抱かざるを得ない。

 厳重注意を受けた上田氏は郵政側に文書を届けさせ、事実上謝罪した。これに先立ち、NHKは続編の放送を延期し、情報提供を呼びかける動画2本をインターネット上から削除している。

 かんぽ生命の不正販売では大勢の被害者が出ている。被害拡大へ警鐘を鳴らすのが報道機関の役割であったはずだ。現場の萎縮を生んでいたとしたら見過ごせない。

 この問題では、議事経過のみしか公表されていない。

 森下氏があくまでも介入を否定するのなら、具体的に誰がどんな発言をしたのかが分かる議事録を公表すべきだ。

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集