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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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米国初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」を支えた数学者…

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 米国初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」を支えた数学者、キャサリン・ジョンソンさんが101歳の生涯を閉じた。黒人女性という逆境を才能と努力で克服し、文民最高位とされる「大統領自由勲章」を受けた▲宇宙飛行士を安全に帰還させるための軌道計算を担当した。導入間もないIBMの電子計算機がはじいた結果を疑ったグレン飛行士から再計算を依頼された逸話は有名だ。彼女が主役の映画「ドリーム」のハイライトでもある▲彼女が別棟の有色人種用トイレに行かねばならないことを知った男性上司が看板をたたき壊す。胸のすく場面だが、当時は宇宙開発でソ連に勝つために黒人や女性も活用すべきだとの世論が高まっていた。男社会の打算から女性活躍が進むのは今の世も同じだ▲この映画には原作がある。戦前から軍用機開発のための計算手として働いた黒人女性たちを発掘した。存在が広く知られなかったのは、その貢献が成果報告書や論文に一切記されなかったからだ。書名は「Hidden Figures(隠された人々)」▲名もなき女たちが踏み固めた道の先に、キャサリンさんの活躍がある。彼女をマーキュリー計画に推したのは、計算手チームを束ねていた黒人女性。食堂の一角に張られた「有色人種女性」の厚紙をはがし続けた女性もいた▲マーキュリーはローマ神話に登場する旅人の守護神。翼の生えた靴で軽々と飛び回る。21世紀の世界の女性たちが、翼の生えた靴を手にするのはいつだろう。

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