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車椅子マネジャーは「大きな存在」 互いを高め合う「バリアフリー」部活 滋賀・伊香

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電動車椅子で生活する伊香の山本陸マネジャー(手前)と隼瀬一樹投手=滋賀県長浜市の同校グラウンドで、菅健吾撮影 拡大
電動車椅子で生活する伊香の山本陸マネジャー(手前)と隼瀬一樹投手=滋賀県長浜市の同校グラウンドで、菅健吾撮影

 今春のセンバツで21世紀枠の近畿地区候補校に選ばれた伊香(滋賀県長浜市)には、ナインと共に強い思いで夢を追う車椅子のマネジャーがいる。山本陸さん(1年)。硬式球を使うグラウンドでは危険が伴うが、ナインは球を投げる方向を工夫して山本さんに当たらないように配慮し、「バリアフリー」を実現した。新型コロナウイルスの感染拡大による休校措置で2日から練習は中止しているが、チームの一体感は高まっている。

 山本さんは先天性の脳性まひのため足が不自由で、電動車椅子で生活する。小学生の時に夏の甲子園をテレビで見て魅了されたが「車椅子で野球なんて」とあきらめていた。中学3年の秋、知人の紹介で伊香の学校説明会に訪れた時、グラウンドからナインの大きな声が聞こえてきた。僕も野球部に入りたい――。情熱がよみがえった。自宅から電車で1時間。心配して近くの学校を勧める両親を説得し、2018年春、伊香に進学した。

 「車椅子だから、と入部を断られたらどうしよう」と悩んでいた時、クラスメートが「野球部を見に来ないか。勇気を出して言ってみないと、返事は分からない」と誘ってくれた。現在のエース、隼瀬一樹投手(2年)だった。その年の秋、マネジャーとして入部した。

 小島義博監督には「配慮はするが、特別扱いしない」と言われ、「簡単にあきらめていた自分に気付いた」。仲間に教わりながら、できることを増やしていった。大声でナインを鼓舞するうち、自身のリハビリも懸命に取り組むようになり、今では補助なしでノックのボール渡しができるようになった。

 「陸の渡した球は絶対に落としたらあかん!」とノックバットを振る小島監督。ボールに必死に食らいつくナイン。同じマネジャーの堀内心愛(ここあ)さん(2年)は「自分から仕事を探すし、一番声を出して応援している。陸君の存在はすごく大きい」。隼瀬投手も「試合中に陸君の声を聞くと、ホッとして気付かされる部分がある」と明かす。

 朝の練習後、ナインは山本さんを学校の最寄り駅に迎えに行き、一緒に登校する。近くの久保田智臣さん(62)は「部員たちが一緒に高校生活を楽しんでいるのがよく分かる。野球部の頑張りは地域に勇気を与えている」。小島監督も「自然と助け合い、応援し合う雰囲気ができた」。山本さんの存在が、チームの結束を高めている。【菅健吾】

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