新型コロナウイルスの感染拡大で日本の株式市場などの混乱が深刻化している。きのうの日経平均株価は1000円超も急落し、終値で2万円の大台を割った。円相場も一時1ドル=101円台に急騰した。
円高は、世界に感染が広がる中、比較的安全な通貨として消去法で買われた結果に過ぎず、積極的な「日本買い」ではない。輸出企業の経営を圧迫するマイナス面が大きい。
市場では、リーマン・ショックなどになぞらえた「コロナ・ショック」との言葉が飛び交い、先の見えない不安が広がっている。
懸念されるのは、ただでさえ低迷する景気が一段と冷え込むことだ。
消費増税後の昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は、きのう発表の改定値が年7・1%減と、大幅マイナスだった速報値の6・3%減からさらに悪化した。7~9月期もほぼゼロ成長と分かり、増税前から消費が弱かったのは明白だ。
1~3月期も感染拡大に伴う企業活動や消費の停滞で大幅マイナスが続くとの見方が増えている。急速な株安と円高は企業や消費者の心理を一段と冷やしかねない。円安と海外経済に頼ってきたアベノミクスのつけが重くのしかかる恐れがある。
政府・日銀は不安を鎮める対策づくりを急ぐべきだ。まず市場安定化のため、米欧と連携し景気を支える明確な姿勢を示す必要がある。
日米欧の主要7カ国(G7)は先週、緊急声明を発表し、直後に米国が利下げした。それでも市場の不安は強く、世界的株安が続いている。
日米欧の中央銀行は今週から来週にかけて金融政策を決める定期会合を個別に予定している。必要な対策は連携して前倒しで打ち出すなど機動的な対応が欠かせない。
財政政策も不可欠だ。政府はきょう感染に伴う緊急対策第2弾をまとめる。中小企業や非正規労働者へのしわ寄せを防ぐ内容にすべきだ。
地方の観光客急減に加え、急速な円高進行は中小企業に大きな打撃となる。年度末を控えた資金繰りの支援などに万全を期してほしい。
政府が要請した一斉休校に伴い、仕事を休まざるを得なかった保護者への助成も必要だ。経済を一段と悪化させないためにも、国民の暮らしを支えることが重要である。