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余録

津波の被害と復興をくり返した三陸では…

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 津波の被害と復興をくり返した三陸では、昔は「津波後は旅の者に満たされる」といわれた。「旅の者」とは津波被害におののいて高台に移った住民に代わり、南から来て浜に住み着く漁民のことである▲3・11で自らも母を亡くした民俗学者の川島秀一(かわしま・しゅういち)さんの「津波のまちに生きて」は、民俗学の先人の調査を引用して指摘する。津波後の集団移住はえてして失敗した。新参の漁民の成功を見てまた浜に戻る住民が多かったからだった▲住民が戻ったもう一つの背景に、移住後も旧屋敷の氏神(うじがみ)を訪ね続けたというような精神的よりどころへの渇望もあった。川島さんは震災翌年に出した同著で、津波を宿命としてきた土地の記憶に根ざす復興や防災の必要を訴えていた▲東日本大震災から9年の歳月が流れた。各地の復興計画にもとづく土地造成や住宅建設はほぼ仕上げの段階を迎えている。それなのに、かさ上げされた造成地には空き地が目立ち、街のにぎわいも目指すものからほど遠い地域が多い▲津波により人口減少の時計を早回しされてしまった多くの被災地である。昔は津波被害と復興のサイクルを回してきた人と海のつながりも以前の力を失った。住民の心の支えとなる土地の記憶も盛り土の下に埋まったとの嘆きも聞く▲だが、津波の死者を忘れぬ住民同士のつながりを大切にし、旅の者――新参の住民、生業、文化をも迎え入れて地域をよみがえらせたのが三陸の伝統である。新しい街にも土地の魂が吹き込まれる「復興」を願う。

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