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舞台縦横ときどきナナメ

「べからずべからずのべからずづくし」の世の中 井上ひさし「きらめく星座」が問う「いま」

左から、瀬戸さおり、久保酎吉、大鷹明良、松岡依都美=宮川舞子撮影

 国家が太平洋戦争へと突き進むなか、人々のささやかな喜びやかけがえのない時間、そして命が奪われていく。

 井上ひさしの「昭和庶民伝三部作」の1作目、「きらめく星座」(栗山民也演出)はそんな時代の不条理を、ちりばめられた懐かしい歌や笑いと涙と共に問いかける傑作だ。これまで何度も見ているが、見るたびにどこか「いま」と響き合う。こまつ座が15日まで、東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演している。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、政府のイベント自粛要請を受けて5公演が中止になり、5日だった初日が10日にずれ込んだ。それでも、なんとか開幕にこぎつけた。感染リスクを広げないことが最優先だ。中止するのも、開けるのも覚悟がいる。

 舞台は1940(昭和15)年11月3日、明治節の夜から、翌41年12月8日の前夜、つまり太平洋戦争開戦前夜まで。浅草のレコード店「オデオン堂」を巡る人々が描かれる。店主の小笠原信吉(久保酎吉)に元歌手の妻ふじ(松岡依都美)、長女みさを(瀬戸さおり)、居候の広告文案家竹田(大鷹明良)とピアノ弾きの森本(後藤浩明)を含め、この家の人たちはジャズや流行歌をこよなく愛する。

 ところが長男正一(高橋光臣)が砲兵隊から脱走したことから、憲兵伍長の権藤(木村靖司)ら官憲からにらまれる立場に。オデオン堂も整理の対象になろうとしている。しかし、みさをが文通相手の傷痍(しょうい)軍人、源次郎(粟野史浩)と結婚し、一躍「美談の家」となる。

 すでに大陸で戦争は始まっていて、社会はどんどん暗く、窮屈になっていく。物資が欠乏する中、経済警察の目をくぐり抜けての食料…

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濱田元子

1989年10月入社。大阪本社学芸部などを経て、2010年から東京本社学芸部。18年から論説委員兼務。担当分野は現代演劇と演芸。年間350本以上の舞台を鑑賞。毎日新聞東京本社夕刊で毎月第4木曜にコラム「日々是・感劇」を連載中。共著に「春風亭一之輔 落語のたくり帖」(自由国民社)。

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