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第94回センバツ高校野球

第94回選抜高校野球大会の特集サイトです。1月28日の選考委員会をライブ配信します。

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新型コロナ センバツ中止 消えた夢、涙こらえ 悔しい、仕方ない 選手「夏こそ甲子園に」

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センバツの中止決定の知らせを受け、厳しい表情でグラウンドに一礼する平田の選手たち=島根県出雲市で2020年3月11日午後6時18分、木葉健二撮影
センバツの中止決定の知らせを受け、厳しい表情でグラウンドに一礼する平田の選手たち=島根県出雲市で2020年3月11日午後6時18分、木葉健二撮影

 第92回選抜高校野球大会は11日の臨時運営委員会で、大会史上初めて「中止」されることが決まった。新型コロナウイルスの感染拡大で社会不安が強まる中、断念せざるを得ない状況となった。選手たちは中止の決定を受け入れつつ、やりきれない様子で「悔しい」と言葉を絞り出した。監督は「甲子園の土を踏ませたかった」と思いをにじませた。

センバツの中止が伝えられ、涙をぬぐう創成館の選手たち=長崎県諫早市で2020年3月11日午後6時半、徳野仁子撮影 拡大
センバツの中止が伝えられ、涙をぬぐう創成館の選手たち=長崎県諫早市で2020年3月11日午後6時半、徳野仁子撮影

 21世紀枠に選ばれ、春夏通じて初の甲子園切符をつかんだ平田(島根)。近年の戦績に加え、野球人口拡大のための幼児向け野球体験会の取り組みが認められ、地元の応援ムードは高まる一方だった。感染防止のため時間を短縮して練習を続け、11日も打撃に汗を流した。午後6時ごろ、植田悟監督(48)が練習を切り上げさせ、選手らを整列させて大会中止を伝えた。硬い表情でじっと見つめる選手らに、植田監督が「夏は島根大会で優勝して必ず甲子園の土を踏もう」と告げると「ハイッ」と大きな声が上がった。

 保科陽太(ひなた)主将(2年)は「残念だが感染症のことなので仕方がない。今は切り替えて、夏に甲子園に出たい」と淡々と話した。坂田大輝外野手(2年)は「(野球体験会で教えた)子どもたちにかっこいい姿を見せたかったので悔しい」と唇をかみしめた。植田監督は中止に理解を示しつつ「選手たちにどんな言葉をかけていくか、ちょっと今は分かりません」と漏らした。

 21世紀枠で46年ぶり3回目の出場を決めていた磐城(いわき)の木村保監督(49)は福島県いわき市内の同校で取材に応じ、「残念という言葉が最初に出る。ただ、社会情勢を考えたらしょうがないですよね」と冷静に受け止めた。東日本大震災発生から9年という日に中止が決まり、「この日なのか、という思いはあった」と話した。

 木村監督によると、岩間涼星(りょうせい)主将(2年)は中止が決まる前から「この期間が夏につながる」と力強く話していたといい、「ジーンとくるものがあった」(木村監督)。「選手らには『中止は誰も悪くない。代表に選ばれたのは確かなことだ』と伝えたい」と語った。

 新型コロナウイルスで100人を超える多数の感染者が確認されている北海道。21世紀枠で初のセンバツ出場を決めていた帯広農(北海道)は2日から休校で自宅学習となり、部活動も中止に。選手たちは検温や健康管理を徹底し、7日からは少人数による自主練習を始め、最終判断を待っていた。

 前田康晴監督(44)は「選手に甲子園の土を踏ませたかったが、このような状況なので決定を支持するだけ。21世紀枠に選ばれてから、いろいろな経験をさせていただき、プラスしかない」とコメントした。

 昨年夏の甲子園を制し、今回のセンバツで夏春連覇を目指していた履正社(大阪)。岡田龍生監督(58)は「残念だ」とコメントした。

 「テレビや新聞で(大型イベントなどの)10日間の自粛期間延長やプロ野球の開幕延期などを知り、この1週間は不安な気持ちで過ごしていたが、生徒たちは甲子園でプレーできることを信じて準備してきた」とし、「野球部の子どもたちのことを考えたらかわいそうだが、同様に中止になった他競技の部員も同じ。これだけ感染者も増え、政府の方針もあり、致し方ないのかなと思う」と受け止めた。

 その上で「生徒たちにとっては非常に残念だが、最後のチャンスである夏に向けて、一日一日を大事に練習していこうと呼びかけたい」と気持ちを切り替えていた。【鈴木周、岩壁峻、高橋由衣、隈元悠太】

常連会えずさみしい 甲子園近くの食堂

センバツの中止を伝えるニュースに肩を落とす「大力食堂」の藤坂悦夫さん(右)と初枝さん=兵庫県西宮市で2020年3月11日午後6時2分、小松雄介撮影 拡大
センバツの中止を伝えるニュースに肩を落とす「大力食堂」の藤坂悦夫さん(右)と初枝さん=兵庫県西宮市で2020年3月11日午後6時2分、小松雄介撮影

 阪神甲子園球場の近くにある「大力食堂」(兵庫県西宮市甲子園網引町)。藤坂悦夫さん(81)、初枝さん(78)夫妻が切り盛りし、大盛りのカツ丼を目当てに多くの客が訪れる。11日夕、センバツの中止を伝えるテレビ中継を見た悦夫さんは「毎年、常連の高校野球ファンが全国から集まる。みんなと会えないのはごっついさみしい」と声を落とした。初枝さんは「高校球児はいつも一生懸命。自分の子供のことのように悲しい」と目を潤ませた。【近藤諭】

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