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AV問題

AV業界は変わったのか 第三者機関設置から3年、1万の作品を停止して見えてきたこと

AV人権倫理機構の会見であいさつする志田陽子代表理事(左端)=東京都新宿区で2020年3月12日、中嶋真希撮影

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 だまされてアダルトビデオ(AV)に出演させられる被害を防ごうと、AV業界の要請を受けて設立された第三者機関「AV人権倫理機構」が12日、東京都内で記者会見を開き、2年間で約1万作品の販売を停止したことなどを発表した。出演強要を防ぐためのルール実施後も強要はゼロではなく、「負のインセンティブを与えることで被害をなくしていく」という。また、接触の多いAVの撮影で懸念されている新型コロナウイルス対応の指針について、担当者は「今後指針をまとめてメーカーに通知する」とした。【中嶋真希】

 同機構は、「AV業界改革推進有識者委員会」として2017年4月に設立。出演強要を防ぐためにメーカーやプロダクションが守るべき新ルールを同年10月に発表し、ルールを守って製作した作品を「適正AV」と定めた。その後は「AV人権倫理機構」と名前を変え活動してきた。

 12日の会見では、同機構の3年間の取り組みが総括された。だまされて出演する女性を減らすための取り組みとしては、プロダクションと女優が対等な立場で契約できる共通契約書が18年4月から義務づけられていること▽不本意な出演を防ぐための意思確認書の制度化--などが行われ、現役で活動する女優を守る仕組みとしては、プロダクションが女優に出演料の総額を開示することの義務化▽出演した映像がオムニバス版などで再利用される際は2次使用料が支払われる▽面接や撮影を録画し、現場を可視化する▽性感染症対策--などが実施されている。

 その中で最も大きな取り組みとして、作品の販売等停止申請ができるようになったことを挙げた。18年2月から20年2月までの間、9272作品が販売やインターネット上での配信を停止されるなどの処置がとられた。

 一方、こうした対策がとれるのは、「適正AV」内のみ。違法な無修正動画での被害報告は依然として多いが、「そこには手が届かない」と武蔵野美術大教授で法学が専門の志田陽子代表理事は言う。プロダクションの中には、所属する女優を無修正動画に出演させる例もあるといい、桐蔭横浜大教授・副学長の河合幹雄理事は「同機構としては、無修正は許さないとプロダクションに訴えていく」と話す。

意に沿わなくても「熱心に撮影」例も

 同機構によるルールが設定されてからも、強要はゼロではない。ルール実施後にAVであることを隠してスカウトされ、意に沿わない出演をしていた例があったことを同機構が把握。撮影時に記録した動画を見ても、女優は「熱心に演技していた」という。河合理事は、「意に沿わない撮影でも頑張ってしまうことは、心理学的にもあり得る。性が絡む問題では、大きな課題だ」と分析した。女優の出演作は、配信停止の措置がとられた。

 同機構がメーカー115社にとったアンケートからは、19年に入ってからも撮影のキャンセルが年間1~5回あったというメーカーが55・3%に上った。意思確認書や、撮影を途中でストップしても違約金を求められないルールが始まってから、「意に沿わない例は、撮影を途中で中断しているのでは」と同機構は分析。表現の自由について詳しい弁護士の山口貴士理事は、「新しい枠組みを作ったことで、女優がNOを言いやすくなった。むりやり撮影しても販売停止を申請されて売ることができないという“負のインセンティブ”を与えることで、被害を減らすことができるのではないか」と話した。

 志田代表理事は、「表現の自由以前の問題として、人権侵害をなくさなければならない。今後の活動を見守ってほしい」と述べた。

新型コロナ対応は今後通知

 新型コロナウイルスの感染拡大で、AV業界にも影響が出ている。ファンが女優と握手や写真撮影ができるイベントは軒並み中止に。同機構では今後対応を議論する。「男優との距離を離して撮影するなど、メーカーはすでに対策をとっている。理事会で方針をまとめて、今後メーカーに通知する」と話した。

中嶋真希

2006年毎日新聞社入社。静岡支局、毎日小学生新聞などを経て15年10月からデジタルメディア局。東日本大震災の影響で統廃合した宮城県石巻市の小学校や、性的少数者、障害者の社会進出などについて取材を続けている。共著書に「震災以降 終わらない3・11-3年目の報告」(三一書房)がある。

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