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社説

震災後の原発政策 思考停止から脱却したい

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 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から9年が過ぎた。日本のエネルギー戦略は依然、迷走したままだ。電力の安定供給と地球温暖化対策の両立にどう道筋をつけるのか、全く見えない。

 事故をきっかけに原発の「安全神話」は崩壊した。安全対策費の膨張で「低コスト電源」でもなくなった。震災前に54基あった原発のうち4割は廃炉が決まり、再稼働したのは9基だけだ。発電電力量に占める割合は震災前の約3割から3%に激減している。

 安倍政権は原子力規制委員会の安全審査に合格することを条件に再稼働を推進してきた。だが、東電の柏崎刈羽原発(新潟県)は合格しても地元同意の見通しが立たない。まして原発の新増設は現実的ではない。

 にもかかわらず、「原発回帰」にこだわる安倍政権は2030年度の原発の割合を20~22%とする目標を掲げ続けている。実現には30基程度の再稼働が必要で、電力業界でも「現実離れしている」と指摘される。

 電力不足を起こさないように、石炭火力発電の増強で原発の「穴」を埋めてきた。今後も20基以上の新設が計画されている。

 だが、石炭火力は温室効果ガスを多く排出する。地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の下、排出削減目標の上積みを求められる日本は石炭頼みをこれ以上続けられない。

 政府は太陽光など再生可能エネルギーの普及も目指すが、天候に発電量が左右される弱点を克服し切れず、思うように伸びていない。

 ジレンマは他国も同じだ。それでもドイツは福島事故を受けて22年までの脱原発を決め、パリ協定の目標達成に向けて石炭火力も38年までに全廃する方針だ。代わりに再エネの発電比率を5割近くまで高めた。

 政策転換に伴う電気料金高騰などには批判がある。一方で、国民を巻き込んで問題解決を探ろうとする真摯(しんし)な姿勢は評価されている。

 安倍政権は近く首相が議長を務める未来投資会議で新たなエネルギー戦略づくりに着手するという。

 日本はこの9年間、「どの電源も大事だ」というだけで議論を避けてきた。これでは思考停止だ。「周回遅れ」を挽回するには、原発政策の抜本的な見直しが不可避だ。

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