美大は卒業・修了制作展講評の季節。多摩美のほか京都、沖縄など各地の大学で、工芸全体もしくは陶磁、ガラスなど、領域を特化して講評してきた。気になるのは、他の専攻、特に彫刻の会場で「工芸的でよくない」という批評が聞かれることだ。話者に特段の悪意があるわけではない。「表面的でちまちましている」「技巧的で内容がない」という代わりに「工芸的」という語を習慣的に使用しているのである。しかし工芸論や工芸史を教える筆者にとっては由々しき問題である。
明治期の日本に登場した中国語由来の語「工芸」は、語源としては、絵を描くことを含め、広くわざ的なるものを指し、日本では当初物作り(手仕事)全般を指していたが、次第に機械仕事が「工業」に、絵画や彫刻が「美術」へと分化し、工芸は美術の格下に置かれていく傾向もあった。けれども20世紀以降、作者が素材を直接扱う表現として日本の工芸表現が世界から注目される中、今なお「工芸的」が否定的な意味で使われることは残…
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